「男が働かないとはけしからん」の社会規範ともうひとつ、男性育休が進展しない理由

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「全力で働けない人がいてもいいじゃないか」

 また、結婚や子の誕生を機に、男性は「一家の大黒柱」となって家族を支えるべく、それまで以上に働くことを求められる規範も存在します。830日付の朝日新聞で、こんな記事を見つけました。

「男が働かなくてもいい!」講演会に異論相次ぐ 高知

 今年6月、大正大准教授で男性学を研究している田中俊之氏(41)が、高知市で講演「男が働かない、いいじゃないか! 男性の仕事中心の生き方を見直す」を行った際のことです。講演で田中氏は、次のような問題提起をしました。

 社会に“男は仕事、女は家庭”という意識が強く、働く女性は増えているのに育児負担は女性に集中し、会社で働く男性は定時で帰りにくいなど、男女とも“性別”によって生き方に影響を受けていることを指摘し、そういった“男は仕事、女は家庭”に縛られる現状を変えていくことが必要ではないか、多様な生き方があってもいいのではないか、と。

 しかし、講演後の質疑では、“演題”の「男が働かない、いいじゃないか」に対する異論が相次いだといいます。高知には残業の多い大企業はなく時間があるのに男性の家庭参加意識が低い、身体的に問題がないにも関わらず“働かないし家事もしない男”が何人もいる、男性が働ないから離婚する女性も多いのに……そんな背景を持つ土地で「男が働かない、いいじゃないか」とはセンセーショナルではないか、と。

 田中氏は、「世代や性別を問わず、そういう人(働かないし家事もしない人)はいる。体を壊しているのに長時間労働している人の方が多い」「批判したい気持ちはよくわかるが、価値観の転換が必要だ。『男は仕事』というルールが今のままであれば、『女は家庭』というルールも変わらず、男女の役割が固定された状況が続いてしまう」と応答しています。

 前出の質疑からは、高知出身の漫画家である西原理恵子さんが、その生い立ちから「男に頼りすぎては破綻する。女の子が働いて自立する力を持とう」と繰り返し訴えていることを連想しました。そういう土地柄があるのかもしれません。しかし一方で、田中氏の言うように「世代や性別を問わず、そういう人がいる」も一理あります。

 「男性が家事・育児をせず、だから女性の負担が多い」「男は仕事、女は家庭」という状況にメスを入れるとき、しばしば、“男はだらしがなく、女は真面目できっちりしている”という認識が前提になってしまうことがあります。古今東西、老若男女問わず、怠け者もいれば働き者もいるものですが、これは不思議なことです。

 先ほど、男性の育児休業取得がどうにも進歩しないひとつの理由として、仕事を最優先に出来ない社員は男女問わずNG、とみなす企業文化に問題があることは明らかだと書きました。男が、女が、という話ではなく、「全力で働けない人が追い出される」ことが問題の根本にあります。「男が働かない、いいじゃないか」ですし、「全力で働けない人がいてもいいじゃないか」だと私は思います。

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