
日野皓正オフィシャルサイトより
ジャズ・トランペット奏者の日野皓正氏による男子中学生への体罰について、ワイドショーなどテレビ番組が大きく取り上げている。そうした番組に御意見番のような立場で出演するタレントや芸人らの反応は様々だったが、それぞれの発言をまとめておきたい。
騒動の発端となった報道記事は「週刊文春」(8月31日号)が掲載したもの。同誌によれば、日野氏は8月20日の公演「日野皓正 presents “Jazz for Kids”」(世田谷区教育委員会主催)で、ドラムを叩く男子中学生の髪の毛を掴み、ビンタしていたそうだ。この様子は動画でも確認することができる。
2011年に起きた愛知県立刈谷工業高等学校での体罰自殺事件、2012年の大阪市立桜宮高等学校バスケットボール部の体罰自殺事件などで、体罰の問題性が改めて注目されたあとも、体罰報道は後を絶たない。
同時に、あいかわらず体罰容認論は根強い。体罰報道のあとに、「すべての体罰を否定するのは違う」「殴らなきゃわからない生徒もいる」「(殴られたことで)本気で考えてくれているんだとわかった」といった擁護論がさまざまな所でみられるのは、もはやお約束だ。
芸能人もまた、自身の発言の影響力を知ってか知らずか、体罰容認論を繰り出す者が後を絶たない。
例えば、ダウンタウンの松本人志は『ワイドナショー』(フジテレビ系)で、次のように発言した。
「(ビンタされた男子中学生が)クソッと思っていたら指導として間違っていた。中学生の心の中が答えだと思う」
「我々の世代は体罰を受けてきた。なぜ昔はよくて今は駄目なのか」
「体罰を受けた僕らは変な大人になっていない。普通の若者より常識がある。なのに失敗作みたいに言われている気がして納得いかない」
いったい誰がどうやって中学生の心の中を知ることが出来るのだろう。今回の男子中学生が日野氏の暴力行為に納得していたとしても(後述)、暴力は暴力であることに変わりない。また体罰が昔はよかったかどうかという点も疑問ではあるが、昔はよかったから今もいいというわけではないだろう。それがまかり通れば、たとえば「昔は女性に選挙権などなかった、今は女性に選挙権があるなんておかしい」といったことも言えてしまう。そして、体罰を受けていたという松本の同世代が“変な大人”に育ったかどうかは問題ではない。むしろ怖いのは、「普通の若者より常識がある」と自認する大人ですら体罰を容認する向きがあるということではないか。