トランプ「DACA廃止!」はいかに残酷か~80万人の若者とアメリカの行方

文=堂本かおる
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 9月5日、トランプ政権が “DACA” 廃止を発表した。そのわずか数時間後にオバマ元大統領が、DACA廃止は「残酷である」とする声明をフェイスブックにアップした。ホワイトハウス時代、いかなる危機にあっても冷静で穏当な言葉を選ぶことで知られた元大統領が、かつてないほどの厳しいホワイトハウス非難を発したのだった。

 DACA(Deferred Action for Childhood Arrivals、ダカと発音)は、子供の時期に親に連れられるなどしてアメリカ合衆国に不法入国し、そのままアメリカで育った若者たち(通称ドリーマー Dreamer)の強制送還を防ぎ、進学や就職を可能にする法律を指す。オバマ元大統領が共和党との苦闘の末、2012年に制定したものだ。現在、全米で約80万人がその恩恵に浴している。

強制送還に怯えるドリーマー

 アメリカは基本的人権の観点からすべての子供に義務教育を与えるため、子供の時期に渡米した不法滞在者もほとんどがアメリカで小中高校に通っている。アメリカの義務教育機関には通称「聞かない、答えない」ルールがあり、生徒や親の国籍や米国滞在資格の有無を問われることはない。英語を話さない子供についてはバイリンガル教育を義務教育の一環として施す。

 こうして文化的に “アメリカ人” として育った若者たちだが、多くの場合、大学進学が困難であり、就職はできない。米国籍者と合法滞在者にしか発行されない社会保障番号を持たないためだ。

 兄弟姉妹で国籍が異なり、進学・就職の可否が異なってしまうこともある。祖国生まれの長子は不法滞在者、親が渡米後にアメリカで産んだ弟妹はアメリカ国籍者のパターンだ。将来の展望がまったく見えない長子と違い、弟妹はアメリカ人としてどの大学にも自由に進め、どんな職業にも就ける。憲法で定められた「生まれながらのアメリカ市民」として大統領にすらなれるのだ。

 ところが不法滞在者は移民局に見つかれば原則は強制送還だ。乳幼児期に来た者は出生国の記憶すらなく、中には英語しか話さない者もいる。出生国が政情不安で非常に危険であったり、または極貧国であっても容赦なく送り返される。

 オバマ元大統領は声明で以下のように述べている。

「アメリカで育った若者たち――私たちの学校で学んだ子供たち、キャリアを始めようとしている青年たち、星条旗に忠誠を誓った愛国者たち。彼らドリーマーは心も、意識も、すべての面においてアメリカ人である。たったひとつ、滞在資格を除いて」

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