近道を探す努力は惜しまない。「良妻賢母」にとらわれた半生から解放された『85歳のチアリーダー』滝野文恵さんインタビュー

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ジャパンポンポン結成

――その後、63歳でチアリーディング団体の「ジャパンポンポン」を結成されますよね。

滝野 アメリカから送ってもらった本に「平均年齢74歳のチアリーディンググループがある」と書いてあったのを読んだんです。私もやりたいと思って、そのリーダーに宛に手紙を書きました。

とはいえ、住所がわかりません。アリゾナ州のサンシティで活動していることと、「サンシティポンズ」というチーム名はわかったので、サンシティの郵便番号を書いて、「サンシティポンズ リーダー様」宛に手紙を出したら、たまたま届いたんです。

――それで届くんですね。

滝野 偶然にもそのリーダーの方が郵便局で20年以上働いていたようで、届いたみたいですね。それで、色々と教えてもらいました。その年の暮れに、渋谷で友人を10人ほどあつめて、「やってみない?」と聞いたら、みんな乗ってきました。

そのままその足で近くにある青山学院大学の渋谷キャンパスに言って、バトン部の学生さんに声をかけて「教えてくれない?」と交渉して。その子が教えてくれることになって、ジャパンポンポンの活動がスタートしました。

――アポなしで行ったんですか。

滝野 そうです。行きません?

――行きません(笑)。それも戦中派だからなんですかね。

滝野 違うわよ。おばさんだから。おばさんはなんでもするのよ。

お土産禁止! の理由

『85歳のチアリーダー』(扶桑社)より

85歳のチアリーダー』(扶桑社)より

――ジャパンポンポンをはじめて、周囲の声はどうでしたか。

滝野 最初にテレビに取り上げられたときは、「年寄りがこんなに足を出している」と話題になりましたね。カメラも足を映して。「ミニスカートは恥ずかしくないですか?」とも聞かれました。

私自身は、全く抵抗はなかったな。なんでかな。けっこう40代でもショーツ(ショートパンツ)履いて街を歩いていました。「あの人変」って陰で言われてたみたいだけど(笑)。

いまジャパンポンポンに来る人たちは、みんなチアの衣装を着たくて入っている方が多いですね。恥ずかしいどころじゃない。キンキラキン、それがいい。

――ジャパンポンポンの会則も興味深いです。

滝野 「55歳以上」「自称、容姿端麗」という厳しい入会資格があります。そのほか、冠婚葬祭や、年賀状、旅行のお土産、練習時の差し入れは禁止。

――なぜですか?

滝野 うっとうしいじゃない。旅行に行くたびにお土産買わなきゃいけないの。誰かがはじめちゃうときりがないんですよ。自分だけ抜けるわけにもいかなくなる。日本人はお土産を買うのに忙しい。アメリカ人と旅行をすると、自分のものだけ買って、お土産なんかほとんど買いません。それっていいなって思います。だから、一切やめましょうと言っています。

それでも、もってくるんですよね。それで怒って泣かせたりね。一回怒って「もうこの習慣やめる? お土産もってくる?」と聞いたら、「それは困る」というんです。でもやってしまう。一時期は私のいないところでやっていたらしいですね(笑)。そのくらい染み付いている。

徹底するのにものすごく時間がかかりました。もちろん、会に無関係な個人的な付き合いは自由ですよ。ちなみに私は息子や娘の義理の親たちにも、お中元なんかは一切やめましょうと言っています。気楽でいいですよ。

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