誘拐、性犯罪、いじめ、恋愛、川。心配でたまらない子どもの安全に、親はどう折り合いをつける?

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野々村友紀子さん(撮影:細谷聡)

好きな人に求められても、えげつない写真を撮ったらダメ!

結婚は「幸せにしてもらうもの」じゃないから

――お子さんが女の子お二人ということもあって、【好きな人に頼まれても変な写真は撮るな。】は超重要事項ですよね。

「そうなんですよ、世間ではリベンジポルノに関する事件がありますし、怖いですよね。そのときはいいけれども、別れてしばらく経つと、急に思い出して嫌な思いをするだろうなと思いまして。相手がデータを持っていたら、どうしようもないですから。撮らない・撮らせないことが第一です。

うちは長女も次女もまだ小学生ですが、知人のお子さんが中学生の女の子で、同学年の彼氏相手に裸の写真を撮って送ってしまったそうです。知人(その子のお母さん)がたまったま娘の携帯を見て発覚したのですが、彼氏を呼んで二人に『これがどれだけ危険なことか』話し、その場でデータを消させたそうです。

中学生くらいの年齢のカップルだと、興味本位で悪気なく撮ってしまうんでしょうね。『流行っているし、友達もやっているし』なんて動機もあるかもしれません。

経験が大事なこともあります、無茶をしていいこともあれば悪いこともある。本人が失敗から学んで『結果、生きていてよかった』と思えばいいことですが、ただ、こういった類のことは、しなくてもいい経験だし、取り返しのつかない失敗になりかねないじゃないですか。基本的には子どもたちには自分で経験して学んでいってほしいですが、『えげつない写真が彼のところにあるの、嫌だな』と思い続ける人生じゃないほうがいい。それは教えておきたいです」

――そのほかにも恋愛関係の言葉は、大人の女性であっても響く読者が多そうです。

「たとえば、【二人で一緒に幸せになる。】とかですかね? これは、私が結婚するときに母親から言われた言葉なんです。『ひとりで幸せになろうとしたらいかんよ。幸せにしてもらおうなんて思ったらいかんよ、そのかわり、2人で一緒に幸せになってね。そのためにはどうすればいいか考えて、結婚生活を送りなさい』と。

それまではなんとなく、結婚すれば自動的に幸せになれると思っていたし、相手に幸せにしてもらう気でいましたが、一回冷静になれた瞬間でした」

――素敵なお母様ですね。お子さんにとってはおばあちゃんからも受け継がれている教えだったりするんですね。

「私が一人っ子で遅く生まれた子だったこともあり、小さい頃から過保護で常日頃から、毎日のように、『お母さんは友紀ちゃんのためなら火の中にも飛び込むし、命を投げ出してでも絶対に守る。ただ、お母さんは、先に死ぬ』と言うような母親でした。まあまだ健在ですが(笑)。

ともかくそんなことをずっと言われていたので、『自分も親になったら、命を差し出してでも子どもを守るものなんだ』と、普通に思っていました。だから自分の子どもができたとき、『自分の命は、これからは子どものために使う』と覚悟が決まったんですよね。まあ、命を投げ出すっていつやねんって話ですけど。今までそんなタイミングがなかったことが幸いです」

――母からのそういう言葉が重荷になるケースもあるとは思いますが、野々村さんにとっては心強いものですか?

「心強かったですね。だから、自分も子どもには同じように言ってあげたいと思っています」

野々村友紀子さん

子どもに強くたくましく生きることを願う、多くの親は同じ気持ちじゃないでしょうか

 本稿冒頭で劇団ひとりさんの帯文「母の言葉は強い!」に身を固くしてしまったと書きましたが、それは母性神話の発動を警戒したからでした。しかし野々村友紀子さんの言葉は確かに強さを持つもので、しかも「母だから」の一言に収斂されない、成熟した大人としての強さをしっかり持ち合わせた女性だからなのだと思います。思えば、子どもに「自分で考えること」を促しながらじっと成長を見守る時間は、親にとっても試練です。ついあれこれ手取り足取り世話を焼きたくなるものだからです。でも、「強さ」は自分自身で獲得する以外、手に入れる方法はありません。だから親は最終的に、見守るしかないのです。『強く生きていくために あなたに伝えたいこと』、親として忘れてはならない姿勢を学べる一冊です。

(撮影:細谷聡)

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