社会

5人の「元・大統領ズ」がハリケーン被災で団結~アメリカの元大統領はふだん何をしているか

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ブッシュ:洪水の水よりも多くの愛

 ブッシュ(息子)は大統領在任中に9.11同時多発テロが起こり、結果的に米国の戦争史上最長期間となったイラク戦争を開始。任期後半にはリーマン・ショックも起こり、以後のアメリカに大きな影を落としたままの引退となった。

 大統領を2期8年努めながらも在任中から「大統領の適正がない」「副大統領の操り人形」などと揶揄されたブッシュは、引退後は大いに解放感を味わったように見える。先に書いたようにハイチ地震では活躍したが社会的な活動は少ない。だが、引退後に始めた趣味の絵画はプロ並みの腕前となり、今年2月に発売された画集『Portraits of Courage』は注目を集めた。同著の収益は引退時にダラスに設立した図書館ジョージ・W・ブッシュ・プレジデンシャル・センターに寄付されている。

 パパ・ブッシュは米国北東部の出身だが、石油事業のためにテキサスに移り、富豪となった。息子ブッシュはそのテキサスで育っている。大統領になる前はテキサス州知事を務めており、大統領任期後はテキサスに戻って現在も同州ダラスに暮らしている。

 生粋のテキサスっ子であるブッシュはヒューストンの惨状に心を痛めている。今回の「ワン・アメリカ・アピール」のPRビデオでも以下のように語っている。

「ここテキサスでは人々が傷ついている。だがテキサス人が言うように、洪水の水よりも多くの愛がテキサスにはある」

オバマ:未来を築く若者の育成

 今年1月に大統領を退いたバラク・オバマは、引退前にマイノリティの青少年男子に教育支援をおこなう「マイ・ブラザーズ・キーパー」というNPOを立ち上げている。人種的マジョリティに比べて教育のハンデを抱えるマイノリティの中でも、さらに女子よりも多くの障壁を抱える男子の支援に「一生かかわっていく」と宣言している。

 オバマも歴代大統領と同じく、自身の名を冠する記念図書館を設立する。地元イリノイ州シカゴに2021年完成予定のバラク・オバマ・プレジデンシャル・センターは図書館の枠をはるかに越え、多彩な文化的、教育的施設となる予定だ。

 そのセンター建設に先駆け、バラクとミシェルのオバマ夫妻は「オバマ財団」を設立した。財団の使命が「世界を変えるために人々をインスパイアし、力付ける」と記されているとおり、若者の市民活動フェローシップ(研究員奨励制度)、市民活動トレーニングなどをおこなう。

 来月には第1回「オバマ財団サミット」を開催する。財団の本拠地であるシカゴ、全米、そして世界中からの若い市民活動家が一同に会するイベントとなるようだ。大の子供好き、かつ若者との交流好きで知られるオバマだが、今後はアメリカと世界のあり方を向上させるための若い人材育成に心血を注いでいくものと思われる。

元アメリカ大統領の使命と影響力

 アメリカにおける政治家としての最高ポジションは大統領であり、大統領を退いた後に就ける地位はない。だが4年間もしくは8年間にわたって大国アメリカと世界を見つめ続けて得た深い知識、広い視野、高度な政治スキルに加え、アメリカと世界への情熱を持つ元大統領たちは、自ら活動の場を設けてしまう。

 元大統領たちはその知名度と人脈を活かし、財団に大きな資金を呼び込むことができる。その資金を基に人道活動、平和活動をおこなう。資金が潤沢であるほど活動内容は充実し、恩恵を受ける対象も増える。また、元大統領の傘下で理想に燃えて働く若い職員たちは、明日のアメリカの市民活動の担い手となる。

 また、元大統領たちは所属党派や政治信条の違いはあるにせよ、大国アメリカを率いるという、他のだれも経験したことのない年月を経ている。だからこそお互いへのリスペクトがり、時には同じ目的のために行動を共にする。

 元アメリカ大統領の使命と影響力は、これほどまでに深く、広く、大きいのである。
(堂本かおる)

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