
「ザ・シンプソンズ」は10月1日の新シーズン初回エピソードの最後にプエルトリコ旗を登場させた。マージが持つスペイン語のメッセージ「UNIDO」は「UNITED、ひとつになった、団結した」の意。
9月20日、強烈なハリケーン・マリアがカリブ海の島、プエルトリコに上陸し、島を壊滅状態に追いやった。
この島は正式には「プエルトリコ自治連邦区」と呼ばれ、アメリカ合衆国の一部だ。米国50州には含まれていないが米領であり、340万人の島民はアメリカ市民である。しかし米国本土の市民の多くが「島民が米国籍とは知らなかった」という島である。
ハリケーン・マリアのとんでもない強風と大洪水によって多くの家屋や道路が破壊され、農地の8割が壊滅状態となった。全島が電力を失い、9割以上の地域で携帯電話のシグナルも途絶えた。水も多くのエリアで止まった。食料も医薬品もガソリンも欠乏した。港と空港もダメージを受けて物資の供給もままならず、被災民が島から脱出する手立てもなかった。プエルトリコ(以下、P.R.)は文字通りの孤島となってしまったのだった。
追い討ちをかけるようにトランプ政権による救援活動はスローを極めた。以下はトランプのP.R.に関する言動のタイムラインだ。
自画自賛ツイートの連打
9/20 ハリケーンがP.R.に上陸した日。CNNはハリケーン報道に終始していたが、トランプは一日の最後にP.R.知事に向けて「我々はあなたとP.R.の人々と共にある。気を付けて。#P.R.Strong」とツイートしたのみ。
9/21 被害は凄惨を極めたが、トランプはP.R.についてのツイートをせず。
9/22 トランプはアラバマ州での議員応援演説にて突如、元NFL(アメフト・プロリーグ)のキャパニック選手を「サン・オブ・ア・ビッチ」と罵倒。同選手が黒人への警察暴力への抗議として、試合前に国歌が流される際に起立および胸に手を当てることをせずに跪き、他の選手もそれに倣っていることへの怒りからだった。ちなみに「ビッチ」は子供が使えば親や教師が叱る言葉だ。それを大統領が演説で使ったのである。
9/23-25 「国歌・国旗をうやまえ」といったNFL関連のツイートを計18本。P.R.については一切触れず。そのことをメディアに非難され始めたため、25日の後半にP.R.についてのツイートを3連投。ただし、その内容は「被災したP.R.は以前より深刻な財政難に陥っており、それに対処しなければならない」というもの。トランプの本音どおりに翻訳すると「借金のある者に金のかかる支援活動はしたくない」である。「FEMA(米連邦緊急事態管理局)はよくやっている」と書き添えているが、翻訳すると「自分はよくやっている」である。
9/27 「米国は2010年のハイチ地震に米軍2.2万人、2011年の東北大地震に2.4万人を派兵したが、自国P.R.には5000人」のツイートが出回る。翌日には「P.R.の港湾に救援物資を詰めた数千台のコンテナが届いているが、トラック運転手がおらず、配送できない」の映像付きニュースが流れる。派兵された米兵の数が多ければ起こらなかった事象と思われる。
9/28 国土安全保障長官代理(*)が記者会見でP.R.の救援は進んでおり、「良いニュースだ」と発言。
(*トランプ政権はメンバーの罷免、それに伴う異動が多く、フルメンバーとなっていない)
9/29 P.R.の首都・サンホワンのクルーズ市長がCNNの朝のニュース番組に中継で出演し、「良いニュースではなく、“人が死んでいくニュース”なのです」と窮状を切々と訴える。
9/30 クルーズ市長の発言に怒ったトランプがP.R.についてのツイートを18本連投。「民主党と手を組んだフェイクニュース」とメディアを攻撃し、クルーズ市長を批判。他のP.R.の政治家に謝辞、FEMAと米軍の活動への賛辞。この日にいたるまで被災した島民を思いやるメッセージはほとんどなかったが、「P.R.の人々へ、フェイクニュースを信じるな!」これについて「電気も携帯もなくて、誰も見てないよ」のコメントが付く。
10/1 現地時間の午後10時過ぎにネヴァダ州ラスヴェガスにて米国乱射事件史上最大の犠牲者59人を出す事件が発生。ホワイトハウスは翌日に予定されていたトランプのP.R.視察を「中止するか検討する」とコメント。
10/2 ハリケーン上陸から12日目。予定どおりメラニア夫人とともにP.R.視察。ここでも「島の再建には我々の予算を使わねばならない」とジョーク混じりに発言。
10/3 乱射事件の2日後にラスヴェガスを訪問。
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