小池百合子氏のふわふわとしたダイバーシティ宣言。ダイバーシティを「リセット」させないために【第16回:トランス男子のフェミな日常】

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 「女性初の大統領になるか」と謳われたヒラリー・クリントンではなく、ドナルド・トランプがオバマ前大統領の後継者に選ばれたとき、アフリカ系アメリカ人のベル・フックスはインタビューでこう語った。「大事なのは女性の大統領を選ぶことより、フェミニストの大統領を選ぶことだ」。

 彼女はヒラリーを支持しない理由として「私たちは帝国主義ではなくフェミニズムを支持すべきだから」と前から述べていた。

 女性の政治家なら「オッサン政治」とは一味違う政策をやってくれるだろうという期待には、うなずける部分も、全然そうではない部分もあって、ひとくちには語れない。

 まず、女性の政治家が増えることの意味は大きい。国内を振り返れば、日本の議員に占める女性の割合はわずか13%で、なんと世界第142(IPU調べ、20171月時点)。これは最近ようやく女性の自動車運転が認められたサウジアラビアの19.9%よりも低い。どう増やすのかは様々な議論があるが、増やしていかないと話にならないレベルといえる。

 とはいえ「当事者」であれば、その集団の利益を拡大させられるかといえば、必ずしもそうではない。今回の衆議院議員選挙で大きな注目を浴びている小池新党は「キーワードは女性」だとして女性やらダイバーシティやらの発言をふわふわ連発しているが、小池氏の発言はコロコロ変わることも特徴だ。今回の選挙では原発ゼロを掲げているが、彼女自身かつて政策アンケートでは「原発は必要」と答えている。新党の中には、ホモフォビア丸出しの対談をしている中山恭子氏もいる。

 ふわふわしたイメージだけ消費されて、選挙が終わったらいずれ捨てられるんじゃないかと思うと、我々はムードよりも実態を掴みにいかなくてはいけないのだと思う。だれがどのような施策を、いつまでにやるのかという具体的な実態を。

 これまでLGBT施策を前に進めるにあたっては、重要なのは議員のセクシュアリティではなく(いくら増えたところでマイノリティである以上は限界もある)、着実にこの問題に取り組んで他の議員にも共感を広められるかこそが試金石だった。2012年に要望に行った時、当時民主党の衆議院議員だった井戸まさえ氏がこう話していたのが忘れられない。

「民主党だから取り組めるなんてことはない。どれだけLGBTの課題に取り組むことに個人の勇気と覚悟がいるか」。

 彼女の大臣への国会質問は「LGBTという言葉をご存知でしょうか」から始まった。政治家の大半はこの言葉を耳にすることも、まともな政治課題として扱うこともなかった。

 そんな時代から、この5年間でLGBTブームが来て、ふんわりとした言説は増えた。しかし、最後まで踏ん張ってくれるのは誰だろうか。多様性の尊重とは、きれいごとばかりではなく汚れ仕事でもある。日本の未来を大きく左右することになりそうな選挙だからこそ、ムードではなく腹をくくって取り組んでくれる個人を求めたい。そういう政治家を支え育てていくのも私たちの使命だろう。だから、地味なことをもっと語っていきませんか。

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