ウッチャン、『逃げ恥』、『バイプレイヤーズ』…ポリティカル・コレクトネスの中で生まれつつある新しいエンタメ 西森路代×清田隆之(桃山商事)

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西森 インタビューでも、男性の中には、「そのときどうでした?」と、あいまいな聞き方をすると、「どうでしたっていわれたって言われてもねえ」みたいな空気になる人もたまにいます。たぶん、とっさに出てこないんだと思います。

 でも、枝葉がしっかりしていなければっていう会話の圧力を感じているのは女性だけじゃないのかも。『すべらない話』的な話法から離れたいという気分もあるかもしれないですね。別に『すべらない話』の話法の芸も面白いことは面白いんですけど、なにかその話法に固執するのが男性性であると考えるほうが問題というか。

 でも実際、バラエティではむしろそうじゃないものも人気になりつつあります。いま出川哲朗さんと内村(光良)さんが再ブレイクしていて、彼らはいわゆる番組内での「偉い人」じゃないんですよね。バラエティにどれだけ出ていても「君臨」するタイプではないし、威圧感もない。

 出川さんはMCという管理職になれないまま、ずっといじられる立場で偉くならなかった。だからみんな怖がらないし、可愛らしさを感じて人気になっている。しかも、出川さんが『滑らない話』的な話法をすることもないだろうし、固執することもない。

 内村さんはいっときテレビの出演本数は減ったけど、それでもずっと第一線で、今や、あの世代の芸人の中で一人勝ち状態ですよね。しかもその人気の理由が「優しさ」というか、固執しなさにある気がするんですよ。『イッテQ』でも『内村てらす』(ともに日本テレビ系)でも、司会なのに全然「ザ・マスター・オブ・セレモニーです」って感じじゃなくて、ほかの人たちと楽しそうに座って、それでいて視聴率も持っている。

清田 ウッチャンがつくる場の空気が人気を得ているってことなんでしょうね。相手のことを否定しないし、貶めたりもしない。

西森 ウッチャンは今53歳だけど、まだ男性の売りが「優しさ」っていうことを受け入れられない人も多い世代だと思うんですよ。

清田 確かにそうですね。松本人志さんなんかまさに象徴的ですが、主張してナンボという価値観だし、常に「笑わせる側」「笑いをジャッジする側」に身を置いていて、笑われること、いじられることは決して許さない。そういう世代のホモソーシャルにあっては、ウッチャンのような周囲の良さを引き出す調和型の男性は「情けない男」と見られてしまう可能性がありそうですね。

西森 松本さんも、実は『水曜日のダウンタウン』(TBS系)なんかでは、そんなにふんぞり返った役割でもないんですよ。存在自体に威圧感があるのは、むしろ浜田さん。くりぃむしちゅーの上田さんとかもそのタイプですね。一人で台本持って別のところに立っているスタイルじゃないですか。でも、松本さんは何か意見求められるときのほうに思想や倫理観が見えてしまって、発言がニュースで物議を醸してしまう……。あの番組でも位置的には横並びで座ってるけど、そういうの関係なしで。

清田 ウッチャンじゃないですけど、僕も男性たちの優しいホモソーシャリティに触れると癒やされる感覚があります。

 バラエティじゃなくてドラマの話になりますけど、個人的に『バイプレイヤーズ』(テレビ東京系)で描かれたおじさんたちの友情がすごく好きで。大杉漣、松重豊、遠藤憲一などがキャッキャ言いながらシェアハウスで暮らしていて、一緒に家事をしたり、グループLINEで盛り上がったりと、仲が超いい。

 出演者はトップクラスに成功している俳優ではあるけど、みんな脇役=バイプレイヤーであって、いわば権力(=主役)を持てなかった側の人々の集まりなんですよね。本人役で登場する彼らの背景に見える「お互いいろいろ苦労してきたよな」っていう共感や共有が、男性同士の優しい連帯を生み出しているのかなと感じました。

西森 『バイプレイヤーズ』のおじさんたちも、コワモテの人が多いのに威圧感のない可愛らしさがありましたね。清田さんも言ったように、そこには、バイプレイヤーズだからってことがすごく関係があると思うんですよ。

 主役が社長とか部長だとしたら、バイプレイヤーズって課長とか主任で、それは出川さんの構図と同じなわけで。単にこじつけだと思うかもしれませんが、彼らの、社長とか部長のように偉ぶらないで、現場の中の一人であるという態度が、あのドラマの空気感を出しているわけですね。

 逆にこれからは、「偉い人」でその権力を傘にきるタイプの人は今までと同じふるまいをしていたのでは大変になってくるはずです。昔のように上司として君臨できなくて、どういう振る舞いを選ぶかが問われてくる。

 会社なんかでも、そうだと思います。偉くて周りから立ててもらえることが当たり前だと思っていたのに、そうじゃなくなったら、「どうしてなんだ!」となって、不満がたまって不機嫌になったりする可能性もありますよね。そういうときに求められてるのって、セルフケアだと思うんですよ。メンタルも含めて、自分を認めて自分の面倒を見ることができる人。それができずに、周りに不機嫌をぶつけていると、周りだけじゃなくて自分にとっても大変でしょう。

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