
Photo by daryl_mitchell from Flickr
10月1日、ネヴァダ州のラスヴェガスで「米国の乱射事件史上最悪」の事件が起こった。屋外会場でカントリー・ミュージックのコンサートが開催されており、2万人の観客が詰めかけていた。夜10時過ぎ、会場から道を隔てた場所に建つカジノ&ホテル・ビルの32階から、突如としてマシンガン(*)の弾丸が観客の頭上に雨あられと降った。観客は何が起こっているのかも分からないままに逃げ惑った。次々と倒れ、血を流す人々。家族や恋人を守ろうと覆いかぶさる人。銃撃の掃射は10分間続いた。会場にいた誰かが撮影したビデオを観ると、「タタタタタタタ……」というマシンガンの音が永遠に鳴り止まないように思え、わずか10分間の出来事とは信じられない。
最終的に「死者58名、負傷者489名」と、アメリカの乱射事件最多の犠牲者を出す惨劇となってしまった。銃はたった10分間で、これだけ大量の人々を亡き者にし、傷付けることが可能なのだ。
犯人のスティーヴン・パドック(64)はその場で自らを撃ち、死んでしまったため、動機はいまだに不明だ。一時「日本にいる」と報道されたパドックの恋人(62)も、事件にはかかわっていないとされている。パドックはフィリピン出身の恋人に一時的に里帰りするよう航空券の手配をし、「家族と家を建てるように」と10万ドルを送金している。恋人はこの大金が手切れ金で、パドックが「別れ話を持ち出すつもりでは」と不安になったものの、真意は分からずじまいだった。恋人は事件の2日後にはアメリカに戻ってFBIの事情聴取に応じている。フィリピン滞在中に東京や香港に立ち寄っているが、事件とは無関係のようだ。
*犯人が使ったライフルには、マシンガンのような自動掃射ができる部品を取り付けられていた
人口より多い銃
パドックが乱射をおこなったホテルの部屋には23丁もの銃が散乱していた。自宅にも24丁の銃があり、計47丁の銃を所持していたことになる。パドックは過去に犯罪歴もなく、すべての銃を合法的に購入したとされている。
アメリカは世界一の銃大国だ。2013年のデータでは、当時の全米人口 3.17億人に対し、3.57億丁の銃が出回っていると見積もられている。
銃とは、人や生き物を殺傷するための道具だ。これだけ大量の銃がある以上、必然的に銃の犠牲者も多くなる。乱射事件は瞬時に大量の人命を奪うため、非常にショッキングであり、報道も大々的になされる。しかし銃大国アメリカにおいて乱射事件で亡くなる人は実は「ごくわずか」であり、平均すると1日に90人以上が 銃によって命を落としているのである。
メディアも一般人も多くの場合、死亡者に注目するが、負傷者のほうが格段に多く出ている。中には一生、障害が残る重傷者も含まれる。
銃による負傷者(2013):84,258人
銃による死亡者(2013):33,636人
銃による死亡者の内訳
自殺:21,175人
殺人:11,208人
(出典: CDC)
「銃の犠牲者=殺人」のイメージが強いが、アメリカでは銃による自殺者が、銃による殺人犠牲者の2倍近くにもなっている。