フェミニズム・性的マイノリティを攻撃する保守勢力は、20年前から変わらない【道徳的保守と性の政治の20年】

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人権と経済が矛盾したときに切り捨てられるのは?

 一方、基本法制定を目指していた頃、フェミニズムサイドは何をしていたかというと、政府主導の男女共同参画の動きについての批判的な議論がしづらい状況にあったといえます。とくに、出版物などを媒介した表立った議論は非常に少なかったのではないでしょうか。

 そんな中で、2000年1月に発行された、アジア女性資料センターの機関誌『女たちの21世紀』に載せられた弁護士の中島通子さん(故人)の文章があります。これはフェミニスト側の基本法に対する表立った批判としては稀有なものでした。中島さんは「『とにかく基本法を成立させよう、そのために批判は控えるべきだ。二兎を追うものは一兎も得ず」などという声が、さまざまな形で伝えられ、まさに批判できない『雰囲気』が広がったのだった」と書かれています。ようするに、議論されると保守から反対がくることが予想されるので、その前に通したいということで、議論を避けてしまったんですね。

 中島さんは多岐にわたり基本法の問題点を指摘しています。中でも興味深いのは、基本法の制定は「国家主義化の中で男女共同参画社会基本法体制のようなものが出来て、女性運動が国家体制に組み込まれていく流れだったのではないか」「男女共同参画社会が目的であって、平等が目的ではなかった」「事実上の平等ですらなく、機会の確保くらいしか謳われていない」とった指摘です。

 また中島さんは、前文にある「少子高齢化の進展、国内経済活動の成熟化等我が国の社会経済情勢の緊急な変化に対応」という文言は、人権問題としての女性差別撤廃条約からきた流れと社会経済情勢の対応が併記されており、この2つが矛盾したとき、社会経済情勢への対応が優先され、人権はどうでもよくなくなることになってもおかしくない、という主旨の指摘もしています。これはかなりのところ、「LGBTブーム」といわれる現在の状況にも対応しうる批判ではないでしょうか。

政権との繋がりもある多様な保守系団体

 バックラッシュの動きに戻りましょう。

 バックラッシュの背後には、様々な保守系団体がいたことがわかっています。その一つが日本会議です。日本会議については、去年くらいからいろいろと本が出たことで注目されるようになりました。

 日本会議は日本最大の保守団体ですが、会員数は4万弱ほどで、それほど多くありません。ただ傘下に宗教団体を多数抱えていることもあり、署名運動や集会の動員をたいへん得意としています。また国会議員、地方議員とのネットワークも持っています。大きな運動の柱として憲法改正、歴史認識問題を一貫として扱ってきた団体で、その女性部である「日本女性の会」は、バックラッシュが盛んになり始めた2001年にできています。男女共同参画に反対する為に作った団体と言っても過言ではありません。なお、昨年来多数出た日本会議に関する本の中で、日本会議があれだけ主導的な役割を果たしたにもかかわらず、フェミニズムのバックラッシュについてしっかり触れたものがほぼない、というのは非常に重要かつ興味深い点だと思います。

 他にも、右派の宗教団体である「新生佛教教団」やその論評紙を出している「日本時事評論社」、現在は「世界平和統一家庭連合(家庭連合)」と名前を変えた統一教会と、そこが出している『世界日報』、国会議員、地方議員、自民党、知識人やジャーナリストも活発にバックラッシュを行なっていました。バックラッシュ言説は、右派メディア(『産経新聞』、『諸君!』 『正論』などの右派論壇誌や『別冊宝島』といったムックなど)、保守系ミニコミなどから発信され、ネットのブログや掲示板などを通じてより拡散していきました。

 そして忘れてはいけないのが「日本政策研究センター」です。1984年にできた民間のシンクタンクで、代表の伊藤哲夫さんは安倍首相のブレーンと言われています。『明日への選択』という月刊誌を出していて、政策アドバイスや意見の陳述を目的としている、と日本政策研究センターのウェブサイトには書かれています。私が見た限り、日本政策研究センターの『明日への選択』が最初に男女共同参画を批判した媒体で、現在に至るまで様々な論評を積み重ねてきています。

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