ワインスタインの性的暴行を「女優が誘う枕営業もあるのに」と軽んじる『バイキング』の異常と、バラエティ番組のエンタメ的売春消費について

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坂上忍の二枚舌

 このコーナーは、映画芸術科学アカデミーによる「この業界で性的搾取やセクハラ行為に対し見て見ぬふりをする時代はもう終わった」という表明に対し、坂上が「もっと早く終わらせることができなかったのかしらと思ってしまいますけれども」と述べて締められていた。いったいどの口が言うか、というのがここまでみた読者の率直な感想なのではないだろうか。

 性的暴行は、実際に起きている件数に比べて、警察に届けられる件数が少なく暗数が多いと言われる。被害者が「あなたにもその気があったんじゃないか」「勘違いさせるようなことをしたのでは」と見られたり、被害者自身も「自分に落ち度があったのではないか」などと思ってしまい、届け出をしたり告発をしたりすることが困難なためだ。

 だからこそワインスタイン事件のはじめに告発した勇気ある女優らは賞賛されたのだし、それによってワインスタイン氏から性的暴行を受けた女性たちが声を上げることができるようになった。

 坂上はコーナーの中でこんな発言もした。

「意外だったのが、アメリカってもっとちゃんとバンバン主張していくのかなって思っていたら、30年もぐっと我慢していることにびっくりした」

「許されることじゃないと思う。ここまでおおっぴらになっていたなら、スタッフも相当知っている人がいたと思う。口を閉じていたのは同じように罪が重い」

 まるで性的暴行よりも「枕営業」に関心を寄せているような坂上らの態度こそ、被害者が事件を届け出することの出来ない状況を作り出している。それにもかかわらず、なぜこうした発言が出来るのか。我慢させ、口を閉ざさせているのも、他でもない坂上ら“業界内の人間”である。

管理売春と何が違うのか

 性的暴行を軽んじることだけが問題ではないだろう。そもそも日本のゴシップ誌やバラエティ番組での「枕営業」の扱われ方自体、ずっと「したたかな女が、自らの意思で肉体を売り、権力ある男を利用する」イメージを伴い、性暴力や犯罪ではなくエンタメネタのひとつとみなされてきた。

 バラエティでの「枕営業」は鉄板のネタのひとつだ。例えば、グラビアアイドルの森下悠里は、今年7月に放送された『じっくり聞いタロウ~スター近況(秘)報告~』(テレビ東京)で、「一部で未だに枕営業がある。(相手は)決定権のある偉い方」と発言、自身も過去に何度か枕営業のオファーを受けたことがあるとも述べている。森下に限らず、グラドルや女優などが枕営業の存在を匂わせるような発言は、バラエティ番組やワイドショーなどで定期的に見られるものだ。中には、マネージャーによって指示されたホテルに行くと、プロデューサーが待っていた、という話もある。

 実際にそのような現場に遭遇すれば恐怖を覚える女性が少なくないはずだが、しかしその「恐怖」は、ないことのようにされている。力ずくでの強姦ではなく、その状況に対峙した女性が従わざるを得なくなり、「枕営業」に応じたならば、それは「合意」であり強制ではないと認識される。物理的な殴る蹴るの暴力はなくとも、従わなければ収入を失うとか仕事をクビになるとか悪いうわさを流されるといった脅しがかけられている可能性がある以上、その性行為は笑い話にはならず文字通り「ヤバイ話」のはずだが、番組上ではそうはならない。

 枕営業が取り上げられる際には、たいがい「芸能界の闇!」といったエンタメ的消費であったり、あるいは発言者の性的魅力をアピールするかのような演出がなされる。しかし実際に「枕営業」が行われているのだとしたら、それはその業界が抱えている問題であり、ワインスタイン氏のような横暴が業界内で許されている/許されかねない、ということになる。マネージャーや事務所による指示であれば、それは違法とされている管理売春となにが違うというのだろうか。

 性的暴行はもちろん、枕営業もまた、『バイキング』のような取り上げ方で、エンタメ的消費を行っていいものではない。ワインスタイン氏の性的暴行を告発をした女優たちの勇気ある行動を無下にする『バイキング』でのワンコーナーは、ワインスタイン氏と同じように罪が重い。
wezzy編集部)

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