女性の痴漢被害を笑い、男性の被害者意識だけを叫ぶ「男性のための痴漢対策ワークショップ」のおぞましさ

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大島「(酔って歩いているときに痴漢に遭うという話の流れで)家まで送っていきますよといわれて、大丈夫ですと答えるけど、でも酔っ払ってふらふらだからそれを支えるふりしてどんどん身体をまさぐられる。(男性器はさわられない?と問われ)酔っ払っているけど、そこは『せめて胸にしろ!』って」
一同(大爆笑)
司会者「下に行ったときの男性のリアクションを見てみたい(笑)」

 同ワークショップは、ジャンルでいえばバラエティである。だから笑いが必要ということなのだろうか。それでも被害者がいる問題を笑いとともに語る神経が、筆者には理解できない。いくら「そんな堅苦しいことを」「バラエティに何を野暮なことを」といわれても、それは譲れない。

 まして、ここでは被害経験そのものが笑われている。酔っている人の身体中を同意なくまさぐる話を聞いて、笑える女性はどれだけいるだろう? けれどこの場ではただただ“面白い話”として消費されていく。たとえ彼女たちが「私は別に構わない」と思っていても、これは同様の被害に遭ったことのある人をも笑っていることになるので、立派なセカンドレイプである。

お前なんか誰も痴漢しねーよ!

 大島氏自身が話にオチをつけて笑いを誘引している、という見方もあるだろう。むらまこ氏も随所に男性登壇者からのツッコミを誘うような発言をし、思惑どおり笑いにつながっていた。これは被害者としてあるまじき行動なのか? 筆者は、彼女たちは「バラエティに出演しているタレントとしての役割を果たしている」のだと見る。そして、これは番組のなかだけで起こっていることではない。社会に蔓延する「痴漢“ぐらい”で騒ぐなんて」と事態を深刻に受け止めさせない空気が、確実にその行動に影響している。

 また、同番組では「痴漢行為をするのは、男性から女性に与える評価である」という考えも見て取れた。

司会者「むらまこはおしりをさわられたとき笑顔になったの? どういう気持ちなの? 何歳のときに痴漢されたの?」
むらまこ「(何歳のとき、というのが思い出せず言いよどむ)」
司会者「ほんとは痴漢されたことないでしょ、見栄を張っていったんだろ! 妄想だろ! やられてねーな、こいつ(大爆笑)」

司会者「女性専用車両は単純にガラガラなのが腹立つ。だいたい中に入っている子はかわいくない」
一同(爆笑)
司会者「女性専用車両なんか乗ってんじゃねーぞ、お前なんか誰も痴漢しねーよ!(爆笑)」

むらまこ「なんでですかね、なんで(私は痴漢)されないんですかね」
司会者「細身だし、遠目で見たらきれいだから、されてもおかしくないのに……そんなにきれいだったら『痴漢から襲われちゃった』ってあるんでしょ?」
むらまこ「ないんですよ~。大島さんの話し聞いていて、大島さんはあるんだ~、私はない~、どうしようどうしようって」
司会者「女性としての劣等感だね」

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