米兵の妻に「夫は戦死も承知で入隊」~嘘に嘘を重ねるトランプとホワイトハウス

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嘘(その3)

 翌17日、ジョンソン軍曹の遺体が軍機によって故郷フロリダ州マイアミに帰着。ホワイトハウス報道官が、トランプが妻マイーシャさんに弔問の電話をしたことを発表。

 CNNの夜のニュースにフロリダ州のフレデリカ・ウィルソン下院議員が出演。議員はマイーシャさんが空港に向かう車に同乗しており、スピーカーフォンを通してトランプがマイーシャさんに「どういうことになるか承知の上で入隊していたのだ。それでも辛いと私は思うが」と言ったと語る。戦地で夫を亡くしたばかりの妻への、このトランプのセリフは聞く者を驚かせた。

 同日、ホワイトハウスはこの件についてノー・コメント。

 翌朝、トランプはウィルソン議員の話は「完全な作り話」とツイート。

嘘(その4)

  19日にケリー主席補佐官がホワイトハウスでの記者会見にて、まったくの別件でウィルソン議員を批判。2015年にフロリダ州にFBIの新しいビルが建った際、“空っぽの樽”(ウィルソン議員のこと)は演説で自身の貢献のみをうるさく語り、ビル建築資金も「オバマ大統領に電話をかけて2,000万ドルを調達」したと吹聴するも、ビルの名称となったFBI殉職職員への敬意を欠いていたと主張した。

 翌日、フロリダの地元メディアが、ビル開設式典でのウィルソン議員の演説のビデオを公開。ケリー主席補佐官が主張したセリフはまったく無かったことが確認された。

 この時点でメディアと一般聴視者は、トランプのみならずケリー主席補佐官までもがトランプの嘘を擁護するために、ごく簡単に事実が発覚する嘘を付いたことに唖然とした。ケリーは厳格な軍人気質であり、混沌としていたホワイトハウス内部の規律を正すために主席補佐官に任命された人物だったからだ。

 しかし、トランプは事態にお構いなしにツイートを続けた。

「フェイク・ニュース・メディアが頭のイカれたウィルソン議員のことを報じ続けることを祈る。彼女は議員だからな、民主党を潰すぜ!」

嘘(その5)

 未亡人となったマイーシャ・ジョンソンさんは、一連の騒動を受けて10月23日に朝のニュース番組、ABC『グッドモーニング・アメリカ』に出演した。ジョンソン夫妻には幼い子供がすでにふたりおり、マイーシャさんは3人目の子を妊娠中だ。

 亡き夫のドッグタグ(兵士の名前などを刻印した金属の認識票)を首にかけたマイーシャさんは、まず夫が亡くなった際の詳しい経緯を知る必要があると語った。行方不明だった48時間の間に夫に何が起こったのか、夫はどのように命を絶たれたのか、妻であるマイーシャさんにも知らされていなかった。次にマイーシャさんは、「損傷が激しいという理由で、何度頼んでも遺体を見せてもらえません。これでは棺の中に何が入っているのかわかりません。もしかすると空っぽかもしれません」と痛切に訴えた。

 問題のトランプによる「どういうことになるか承知の上で入隊していた」発言については、マイーシャさんは「ウィルソン議員は作り話などしていません」と断言した。「その言葉に私は泣きました。トランプの声の調子にとても腹が立ったからですし、夫の名前も覚えていなかったからです」「そのことに最も傷付きました。夫は国のために命を賭けて戦ったのに、なぜ夫の名前を覚えていないのでしょう」

 番組放送直後、トランプは以下のツイートをおこなった。

「ラ・デイヴィッド・ジョンソン軍曹の未亡人と、とても敬意のある会話を交わし、初めから彼の名前を間違えることなく言った!」

 驚くべき稚拙な文体だが、要は未亡人を体良く嘘つき呼ばわりしているのである。アメリカでは軍と兵士は敬意の対象となる。さらに戦死者と、“ゴールドスター・ファミリー”と呼ばれる遺族は神聖に近い扱いとなる。したがってトランプですらマイーシャさんを悪し様にはできない。だが、言わんとしているのは「自分は適正な追悼のセリフを言い、名前も間違えなかった。未亡人は嘘を付いている」である。突如として夫を亡くし、これからひとりで出産し、3人の子を育てていかなくてはならない傷心の女性を嘘つき呼ばわりし、本人がまったく望まない世間の耳目を集めさせる大統領とは一体、何者なのだ。

 この日の午後、国防総省は記者会見を開き、ニジェールでの事件についての説明をおこなったが、詳細は相変わらず不明のままだった。マイーシャさんのテレビ出演の火消しの意味で急遽おこなったのではないかと思われる。

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