米兵の妻に「夫は戦死も承知で入隊」~嘘に嘘を重ねるトランプとホワイトハウス

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人種問題に発展

 今回の事件は、そもそも米兵隊がISISに待ち伏せされた上に死者と行方不明者を出し、結局は殺害され、その経緯も不明であること自体が軍事大国アメリカにとって大変な不名誉であり、かつ迅速な発表を怠ったホワイトハウスに大きな問題があった。

 さらに亡くなった4人の兵士のうち、ジョンソン軍曹のみが黒人であったことから人種問題にもなった。マイーシャさんに同行してトランプのセリフを聞き、トランプを非難したウィルソン議員も黒人、しかも女性だ。ケリー主席補佐官はウィルソン議員が白人男性であれば、あれほどの「大嘘」を記者会見で堂々と言ってのけただろうか。

 マイーシャさんがテレビ出演した日の夜、CNNの黒人キャスター、ドン・レモンは自身の番組でトランプへの「公開レター」を朗読した。レモンはトランプに「大統領として、軍の最高司令官として、こんなことはもう止めてください」と訴え、同時にマイーシャさんに向けて、「これがアメリカです。私たちがあなたを支えます」と宣言し、声を詰まらせた。スタジオにいた黒人女性ジャーナリストのエイプリル・ライアンも涙をこらえていた。ちなみに二人ともジャーナリストとして、過去にトランプとの衝突を体験している。

 だが、マイーシャさんは芯の強さを見せた。空港では棺に突っ伏して泣いたが、1月に生まれる女の赤ちゃんについて聞かれるとかすかに微笑み、「お父さんはすばらしい人だった。ヒーローとして亡くなった」と教えると語った。

ホワイトハウス総出の嘘

 ニジェールでの襲撃事件は米軍側の失策だったのか、それとも不可抗力だったのか、原稿執筆時点では発表がなされていない以上不明だが、トランプ政権のメディアを嫌う閉鎖性が今回の問題の発端だ。だが、根幹はトランプの恐ろしいまでの人間性の欠如にある。夫を亡くしたばかりの妊娠中の妻に「戦死覚悟で入隊したんだろ」と言う人間など他に存在するだろうか。しかも大統領という立場にありながら。さらに、非難をかわすために迷うことなく嘘を付く。その嘘をかばうために、今度はホワイトハウスが総出で新たな嘘を付く。

 マイーシャさんは、ニュースキャスターからトランプに言いたいことはあるかと聞かれると、一瞬の間を置いて静かに答えた。「言うことは何もありません」。

 国民、わけても戦死した兵士の妻から完全に見限られてしまう人物を大統領に掲げる国、アメリカ合衆国。
(堂本かおる)

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