『伊藤くんAtoE』の魅力は「ミソジニー」を乗り越えることにある。女同士がいがみ合うバカバカしさに気づかせる「伊藤くん」というクズ

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 さて、ただ巧いだけでは、この連載ではとりあげません。なぜ本作をとりあげたかというと、「伊藤くん」がクズ男すぎて、女の子のいろんな面を引き出しているからです。

 例えば、島原智美は佐々木希さんが演じるくらいですから、美人でどう見てもモテという面で強者でありそうな人なのに、なぜか「伊藤くん」にはぞんざいに扱われています。このときの「伊藤くん」は、田中圭さんが演じていて、甘い見た目なのに、中身はふんぞり返っていて身勝手な男という、「こういう男いるいる!」……と納得してしまうキャラクターになっています。原作では、この智美はもう少し自覚的に伊藤くんにハマっているのですが、ドラマでは、コンサバで相手に合わせてしまいすぎることで、相手を余計にふんぞりかえらせてしまう部分が出ています。

 地味な見た目で学芸員の仕事に復帰することを目指す野瀬修子(志田未来)は、バイト先の塾の同僚である「伊藤くん」から身勝手に好意を寄せられて困っています。このときの「伊藤くん」は、やたらとポジティブで人との距離感がわからなくて、最高にうざいキャラクター。中村倫也さんがそれを上手に演じています。

 男性をとっかえひっかえしているのだけれど、誕生日を彼氏に祝われたことのない相田聡子(池田エライザ)は、友達・神保実希(夏帆)へのライバル心から、実希が好意を寄せる「伊藤くん」を寝取ってしまうような人。お相手の「伊藤くん」は、『HiGH&LOW』シリーズの村山でおなじみの山田裕貴さんが演じているのですが、意外な展開で驚かせてくれます。

 神保実希(夏帆)は、色っぽくて男性を落とすテクニックを熟知している聡子と違って、かわいいのに奥手で男性経験が少ない処女。そんな奥手な実希と「伊藤くん」がいい感じになっていく様子が許せず、聡子は伊藤先輩を誘惑してしまうのですが……。この「伊藤くん」については、謎解きに関わってくるので、ここではおいておきます。

 様々な側面をもった「伊藤くん」が登場することで、女の子たちは、自分のコンプレックスを刺激されたり、女としての優位性を確かめようとしてしまったり、親友とギスギスしてしまったりもします。

 その様子だけを描くドラマだったら、今までにもありましたし、それは男性の持つミソジニーのせいで、女性同士がミソジニーを向け合うという現実の一部分を描いただけになってしまいます。

 このドラマのいいところは、女同士が向けあってしまったミソジニーが、「伊藤くん」というクソ男と向き合ううちに、女が男のせいでいがみ合うことは無意味なものなんだ、とちゃんとわからせてくれるところなのです。

【ここからネタバレで本題に入ります。気になる方にはネットフリックスなどでの視聴をお勧めします】

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