女性を惹き付ける、「ケータイ小説」体裁の秘密——伝統芸の「ポエム」の向こう側

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「なんとなくポエミィ」なケータイ小説本文

 ポエムなのは冒頭だけなのか。そう聞かれたら、私は「うーん……」と首をひねる。その理由をお伝えするために、次の画像を作った。ケータイ小説の「あるある本文」である。

女性を惹き付ける、「ケータイ小説」体裁の秘密——伝統芸の「ポエム」の向こう側の画像3

 プロローグ、本文ともになんとなくの傾向があることを感じていただけるだろうか。

 一行一行にあまり情報が詰まっておらず、行間がふんだんにあけられていて、地の文であってもやっぱり全体的にポエミィな感じ。読者に向かって長々と状況を説明したり、自意識をことこまかに分析したりはしない。

 思いきり雑に言うと、これがケータイ小説の基本体裁である。小説というよりも、少女漫画のイラストを全部消した状態で、セリフとモノローグだけを目で追っていっているのに近い、と言ってもいいくらいかもしれない。「地の文」として、ゴリゴリ重厚な文章を書くことは全く求められていない世界だ。

 最後に、ここまでの説明をわかりやすくするため、「ケータイ小説っぽくない」画像をお見せする。「小説家になろう」や「カクヨム」など一般の小説投稿サイトで読まれるのが、このような体裁のテキストのはずだ。

女性を惹き付ける、「ケータイ小説」体裁の秘密——伝統芸の「ポエム」の向こう側の画像4

 何度も私の駄文をお見せして恐縮だが、これと比較すると、「ケータイ小説あるある体裁」の特徴が、感覚でおわかりいただけるのではないかと思う。

 もちろん、作家によっては地の文章が多かったり、リアリズム的というか、クールな言い回しを好んだりもする。以前インタビューした映画館さんなどはまさにこのタイプであり、感想として「文章が難しい」と書かれているのをちょいちょい見かけてきた。例外的な作品はいつの時代もたくさんあり、その中から名作や、あるいは新しい定番が生まれることもある。

 ただ、今のところの「多数派」を占めるのは、やはり上記のような「なんとなくポエミィ」な体裁である……そう断じても、そこまで見当違いではないだろう。ふわっと感覚的に、さらっと素早く読み進められる。それがケータイ小説の世界だと私は思う。

ケータイ小説っぽい体裁に、何を入れればケータイ小説になるのか

 ここまでの画像作成などで、私の伝えたい「ケータイ小説とは何か」の像が、表面的な部分に関してはすこしだけはっきりしてきた。つまり、ケータイ小説サイトに掲載されており、かつケータイ小説的な体裁——横書きで、平易かつポエミィな文章が行間をあまり詰めずに並んでいる——で書かれた小説であること。これは、「ケータイ小説とは何か」を考えるとっかかりになりそうである。

 しかし、ここで私はまた、あたりまえの疑問に行き当たらざるを得ない。

 そもそも、私は何を指して「ポエミィである」と言っているのか。そして、「この体裁で書かれていれば全部ケータイ小説である、とはたして言えるのか? ストーリーにも何かしらの条件が発生するのでは?」ということだ。この辺りを多少なりともおさえておかないと、「ケータイ小説とは何か」は語れない気がする。

 というわけで、次回は「ポエム」について考えたい。今回はここまで。

※ギャル字で書かれたケータイ小説が今見ると「古語かよ」状態であるように、今回作成した画像も、数年後には「文語体かよ」と思われるくらい古くなる可能性がある。これが「2017年時点でのあるある」であることは、ここで改めて強調しておく。

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