生まれつきの茶色い髪に「黒染め」を強制~教育の剥奪、人権侵害、そして根深い差別

文=堂本かおる
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人間の本能である差別・人権教育

 マジョリティ(優越)である自分の外観こそが「正統」な外観であり、その外観がマジョリティであることの証明書となる。加えて、同じ外観を持つグループの一員であることに歪んだプライドを持つ。そのグループが大きければ大きいほど安心感も増す。対して、相手の外観は正統から外れた醜い、もしくは滑稽なものであり、相手を見分ける際の目印として使い、かつ見下しの象徴として笑い者にする。

 日本はアメリカと違い、人口の圧倒的多数は日本人だ。マイノリティの中の多数派も韓国系と中国系であり、外観の違いによる差別はおこないにくい。ゆえに通名など外観以外のもの、もしくは非常に些細な違いが差別の対象となることが多い。

 日本のこうした社会背景から分かるように、学校の黒髪規定は人種・民族差別ではなく、日本人の中の身体的少数派への差別だ。マジョリティである黒髪を正統派(学校の場合は真面目な生徒)とみなし、茶色い髪は規格外(不真面目な生徒)として厳しく非難する。今回の件の生徒は、ある教諭から「母子家庭だから茶髪にしているのか」と言われたとある。教諭は母子家庭と茶色い髪の両方にそれぞれ偏見を持ち、そのふたつを関連付け、生徒を二重に責め、傷付けたのである。

 徒党を組んで他者を差別し、幻の優越感に浸るのは人間の本能なのかもしれない。だとすれば、子供のうちに人権について学び、知識と思考によって本能に打ち勝つ訓練を重ねる必要がある。ゆえにアメリカは人権教育に熱心であり、ニューヨークタイムズ紙、タイム誌、フォーブス誌などアメリカのメディアは今回の懐風館高校の件を報じている。

 いずれにせよ、多人種・多民族ゆえに髪の色も十人十色であるアメリカでは、全校生徒の髪の色を統一するという発想がそもそも大きな驚きとなる。だが、日本も徐々に人種・民族の多様化が進んでいる。本来ならそれを見越してこれまで以上の人権教育をほどこすべき学校が、「たとえ金髪の外国人留学生でも規則で黒く染めさせる」と言う。まさに人権後進国である。

 最後に、今回の件を伝えるティーン・ヴォーグ誌の冒頭部分を記しておく。

「髪の色を変えるって、普通は楽しいよね。レインボーカラーまで含めて、可能な色をぜんぶ考えて。でも、日本のある生徒にとっては(以下略)」
(堂本かおる)

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