イヴァンカ来日騒動とはなんだったのか?~熱狂した日本のメディア、冷めていたアメリカのメディア

文=堂本かおる
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 11月初頭のイヴァンカ・イン・ジャパン・フィーヴァーを海のこちらから眺めていたが、なんとも言えないチグハグ感があった。

 日本のメディアはイヴァンカの日本到着の瞬間、安倍首相との会食、皇居前広場での散策を盛大に報じ、イヴァンカ “大統領補佐官” の美貌とワーキングウーマンとしての有能振り、トランプ大統領からの信頼の厚さなどを褒めそやした。来日中のファッション、訪れたレストランも当然のように詳しく報じられた。だが、来日の目的であった国際女性会議での基調講演は半分ほどしか席が埋まらず、ガラガラだった。

 果たしてイヴァンカ・トランプは日本で人気があるのか、ないのか。また、アメリカではどういったポジションにあるのだろうか。

アメリカでの報じられ方

 アメリカの各メディアもイヴァンカの訪日を報じたが、日本のメディアのような熱狂振りではない。まず、イヴァンカの大統領補佐官としてのポジションに重きを置いていないことに気付く。

 CNNは記事中に肩書きを用いず、「イヴァンカ・トランプ」とのみ記している。フォックス・ニュースは「大統領の娘」「ファースト・ドーター」、ニューヨーク・タイムス、ワシントン・ポスト、ヴァニティ・フェアは「大統領の娘かつ大統領補佐官」もしくは「ファースト・ドーターかつ大統領補佐官」と、大統領補佐官としての肩書きは軽視され、補佐官としての活動にもほとんど、またはまったく触れていない。

 フォーチュン誌はイヴァンカのアジアでの高い人気について書いている。なかでも日本と中国では「成功した実業家」「3児の母」「ファッション・アイコン」の3つを見事なバランスでこなしていることが憧れの理由であると分析している。そこに「大統領補佐官」という4つ目の側面は含まれていない。日本人もまたイヴァンカを政治家とみなしていないと解釈しているのだ。

 では、日本では実際に「成功した実業家」「3児の母」「ファッション・アイコン」としての人気があるのだろうか? そうであれば、講演会は満席になったはずだ。

 講演会の不入りについてニューヨーク・タイムスは、ホワイトハウス広報の苦し紛れの言い訳「講演会は入場希望の登録者がもっとも多いイベントだったが、警備の都合上、全員が入れなかった」を記載している。

 タイムスは同じ記事で若い日本人女性によるイヴァンカ賞賛コメントとともに、京都外国語大学のナンシー・スノウ教授(専門:広報外交)による「イヴァンカの来日は日本人の気分を良くさせるためのお飾り」という非常に手厳しいコメントも掲載している。

 フォックス・ニュースはイヴァンカの警護に当たった女性のみの「女性警戒部隊」を「ガール・スクワッド」と呼び、「機動隊の通常の重装備はイヴァンカの警護には不向きな服装のようだ」と皮肉まじり。警戒部隊の軽装については他のメディアも触れており、要人警護についての日米の感覚の違いを知ることができる。

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