インターセックスの人々は「第3の性別」を求めているのか? インパクトを求め、単純化した報道は当事者と家族を危険に晒す

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問題は不正確な知識に基づいた報道

 今回の男女以外の性別欄を認める決定は、その人の「性自認」が認められたという観点からはとても歓迎するべきことです。しかし、より正確に情報を出さなければ、いま述べたようなリスクを高めてしまう可能性があります。ここで問題になるのは、「男女以外の存在を見てみたい」と欲望する「メディア・観客の問題」でしょう。

 たとえば近年でも、DSDsではないトランスジェンダーの人の訴えによって、オーストラリアのパスポートおよび出生届の男女以外の「インターセックス」の欄が追加されそうになりました。このときは、インターセックス・DSDs当事者団体の意見も全く聞かずに、国レベルで「第3の性別」というステレオタイプに流されかけていたところを、当事者団体がギリギリで止めて、最終的に「non specific」という欄になりました。しかし、大変興味深いことに、一般メディアではこのような背景を知らないまま、ただ「第3の性別が認められた!」と伝えるだけでした。

 またアメリカでは、インターセックス当事者の生の声を伝えようとしている活動家が、あるメディアに、自分のエッセイとともに、男性と女性ふたりの当事者の写真を使ってもらうように送ったところ、その写真の代わりになぜか男女半々の存在のような写真が使われてしまうということもありました。

 日本でも、コミックや小説などで「男でも女でもない」と描写されたり、理解者を名乗る人が「インターセックスを中間と説明するのは、男女だけではないという、インパクトのためです」と言ってはばからないような状況もあります。これでは19世紀の見世物小屋の時代となんら変わりありません。

 誰も好き好んで自分の子どもにメスを入れたいと思う親御さんはいません。ですが、親御さんたちや大多数の当事者の人々は、このような無神経な人々にさらされることも、深く恐れているわけです。そうなると、手術をする当事者家族のみなさんの気持ちも想像できると思います。

 「観客の問題」と言っても、社会の人々がDSDsについて正確な知識を持っていないのは当然のことで、むしろ問題はメディア側にあるでしょう。それが果たして一見「好意的」なものであったとしても、人々の耳目を引くための「インパクト」を求め、背景の複雑な状況を切除していては、その人の「性器」という極めて私的でデリケートな領域を侵害し損なってしまうことにもなるのです。そこでは、自分が見たいイメージではなく、「人」を大切にする人として最低限の倫理観と、正確な知識が必要となるでしょう。

 欧米では当事者のみなさんの一部が自分で声を上げるようにもなってきています。しかし、日本ではその前段階である、DSDsの正確な知識が、社会でもDSDs当事者自身の中でさえも、まだ共有されていません。

この記事は、今回のニュースを理解するための、必要最低限の解説に留めています。現在、wezzyにてDSDsの基礎知識を伝えるための記事を準備中です。本記事でDSDsに関心を持たれた方は、ぜひ後日掲載予定のこちらの記事もチェックしてみてください。
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