社会

米国地方選:8人のトランスジェンダー候補が当選〜トランプ政権に戦いを挑む市井のリベラル

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ポスト・オバマで揺れ動くアメリカ

 実は、ムーアのスクープ第一報が報じられた日、トランプが小躍りして喜んだであろう世論調査も発表されていた。ポリティコとモーニング・コンサルトの共同調査によると、「昨年の大統領選を再度おこなうとしたら、誰に投票するか」の質問に対し、トランプに投票した有権者のうち82%が「トランプ」と答えている。

 この結果を解釈するには、昨年の選挙の様相とアメリカの二大政党制を理解しておく必要があるかもしれない。トランプに投票しないのであればヒラリー・クリントンに投票するか、もしくは棄権しか選択肢がない。昨年の選挙戦ではっきり示されたように、トランプ支持者はヒラリーを非常に嫌っている。また、トランプに投票しなければ民主党から大統領が出ることになる。現在のトランプの政策や言動を支持するか否かにかかわらず、共和党支持者にとっては絶対に避けたい事態だ。

 とはいえ、強固なトランプ支持者が少なくないことは確かだ。今年の地方選挙でマイノリティが大躍進したのは、トランプ自身によるマイノリティ抑圧政策への反発が大きな理由と思えるが、同時に白人至上主義のネオナチ、KKKなどが再度の台頭をみせていることへの不安感も背後にあるのかもしれない。こうしたグループは性的マイノリティ、人種マイノリティ、移民、イスラム教徒、ユダヤ教徒を徹底的に嫌う。

 現在、10代の少女たちへの性的ハラスメントが問題となっているロイ・ムーアは思想の偏りも大きな問題だが、上院選の予備選ではすでに勝利を収めている。つまり、地元アラバマ州では支持されているということだ。そもそも特別選挙の理由となったトランプ政権のセッションズ司法長官も、昔、判事でありながら黒人の蔑称「Nワード」を使うなど問題を起こしてきた人物である。このセッションズはトランプの立候補初期からの熱心な支持者だった。トランプ-セッションズ-ムーアの繋がりは、リベラルにとっては受け入れることのできないものだ。

 トランプとアンチ・トランプ。共和党と民主党。保守とリベラル。9年前に米国史上初の黒人大統領を生んだこの国は、そのために大きな揺り戻しに見舞われている。トランプは黒人大統領に象徴されるリベラルなアメリカに我慢ならない保守派に支持されて当選した。そのトランプに対して今、リベラルが戦いを挑んでいる。

 アメリカの国政は今後も予断を許さない。あと1年で中間選挙を迎えるのである。
(堂本かおる)

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