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彼女たちが傷つきながらも複数の人とセックスをくり返すのはなぜ? 「メンヘラビッチ」のバックグラウンドを考える

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 読書会以降、まなみさんと私は複数人で集まり、性や恋愛について語り合うようになりました。その中にみさとさん、麻衣さんという友人がいました。麻衣さんは読書会主催者のひとりでもあります。メンヘラビッチを含めいろんな話をしました。そして、集まりをきっかけに彼女らふたりは2年前からバーを貸し切って「メンヘラビッチバー」というイベントを不定期で運営するようになりました。

 名前からして過激なバーだと思われがちですが、やっていることはしっかりとした当事者研究です。みさとさんは以前NPOで当事者研究に関わっていたので、その手法が生かされています。「メンヘラビッチが楽しく働く」がコンセプトのこのバーは、主催者以外にもコンセプトや回ごとのテーマに合った人がバーテンとしてカウンターに入ります。そして、なぜ自分はメンヘラビッチになったのかをプレゼンし、ふり返ります。このバーを開催することで、当事者が変化し癒やされていく。経験を話し、活かし、働いて、バーの売上でお金を稼げる仕組みになっています。

 メンヘラビッチバーについて、「ダメな人でも居心地がよく話ができる場所」という主旨の紹介をされたとき、みさとさんは「誰もダメじゃない、ダメだと思っているなら一緒に当事者研究をしましょう」と応えていました。その言葉が、いまでも印象に残っています。

メンヘラビッチはやさしくて、モテる

 みさとさんの柔らかさとコミュニティを回す力。麻衣さんの純粋さと人を巻き込む力。双方が合わさって、傷つけられることなく、安心して、楽しく性や恋愛の話ができる場として大人気になりました。

 メンヘラビッチの彼女たちはとてもモテます。やさしくて人の気持ちを敏感に感じ取り、寛容さがあり、魅力的です。私はこの場がとても好きでした。けれど、バーに来る人のなかには「メンヘラビッチとセックスができるんじゃないか」と勘違いする人もいます。その場に、性暴力を無くす活動をしている私のような人間がいれば、そんな人たちも身構え、結果として抑止力になるのではとも考え、積極的に参加していました。

 安心して性を語れる場が少なく、傷つきも含めて楽しく共有できる場を求めている人は多いーーこのバーを見てそう感じた私は、別の切り口でも語れる場が必要だと感じました。そのことがSEX and the LIVE!!という女性が性を語るプロジェクトの立ち上げに大きく影響を与えました。冒頭にお話したたかだまなみさんも、その後メンヘラビッチを乗り越え、結婚して明るい家庭を作る実験という名目でウェブで“婿募集”した経緯があり、同プロジェクトに参加しています。

 性に奔放な女性というと偏見が強く、たとえ苦しんでいても自己責任だと見られがちです。けれど彼女たちと話してみると、そのバックグラウンドを無視して考えることはできないと感じます。とても繊細でやさしく、懐の深い彼女たち。さまざまな社会問題によって生きづらさを抱えていると知られるようになってほしくはありますが、それで今度は「かわいそうな人や支援対象として見られる」ようになるのでは、彼女たちは救われません。

 メンヘラビッチの女性たちが恋愛やセックス以外で人とつながる場、楽しく生きて彼女たちのよさを活かして働ける場。そんな場こそがほんとうはもっとたくさん求められているのではないでしょうか。

▼メンヘラビッチバーのブログ
http://menherabitchbar.hatenablog.com/

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