日本は決して外国人タレントが生きやすい社会ではないだろう。外国人タレントの起用のされ方は一辺倒で、「たどたどしい日本語」を揶揄し、笑うようなこともいまだになされている。自国をあげるために、他国からの観光客に「日本のいいところ」を代わりに言わせるような番組も多数ある。外国人をはっきり「外人」として扱っていることがほとんどだ。
そんな中で、上沼の「外国人タレントが嫌い」発言が、毒舌として受け入れられ、「みんなも思っていたのかも」と、上沼のようなことをはばからずに言い出す人が出てきたらどうだろう。たかがいちタレントの発言といえなくもないが、ちりも積もれば山となる、だ。少なくとも影響力の強いマスメディアであるテレビで躊躇なく流していい発言だとは思えない。
いわゆる「報道番組」と違う、ワイドショーや情報バラエティ番組などでは、「上沼・高田のクギズケ」のように「気になる情報のウラのウラ」や「真相」「◎◎では言えない本音」といった言葉がたびたび並ぶ。上沼も「なんでもかんでも綺麗ごとでわけわからんこと言う人、大嫌い」と発言しているが、こうした「本当は思っているに違いないことをずけずけという」ことを代わりにいうタレントには一定の需要があると思われている。
緻密な議論を追わずにすむ、ざっくりとしていて、さらに毒気もある発言にはなんらかの快を覚えるものなのかもしれない。しかし、そうした発言の中には、性差別や民族差別など、様々な差別・偏見がうっすらと垣間見えてくることがある。毒舌が問題なのではない、毒さす相手が間違っていることが問題なのだ。
日々、ワイドショーや情報バラエティ番組では「これは問題ではないか」と思わせる発言が数々なされている。こうした番組の視聴者層と、専門家による解説や地道な取材に基づいた報道などが流れる報道番組の視聴者層はおそらく異なるものだろう。だからこそ、ワイドショーや情報バラエティ番組の制作者には、自分たちが取り上げる内容の重みと、視聴者に与える影響の強さを強く自覚して欲しい。
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