私が「エイジアン・ビッチ!」と呼ばれた理由~増えるアジア系への差別 in アメリカ

文=堂本かおる
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高学歴・高所得なアジア系

 ニューヨーク市には公立高校が約400校ある。入学申請方法は日本と異なり、中学の成績、希望校への見学参加などに基づくコンピュータ・マッチングである。ただし最優秀8校は入試がある。その8校のうち6校でアジア系の生徒が最大多数派を占めている。中には全校生徒の8割近くがアジア系の学校もある。先に書いたとおり、NY市におけるアジア系の人口は13%であり、アジア系高校生の優秀さを物語っていると言える。

 この現象には理由がある。アジア諸国からは子供に教育を与えることを目的に移住する家族が多く存在する。以前、ある雑誌の記事のためにインタビューしたヴェトナム生まれの若い男性がそう語った。両親は祖国で築き上げたすべてを犠牲にし、まだ幼い子供たちを連れてアメリカに移民としてやってきた。懸命に働きながら、子供には猛烈に勉強をさせた。その男性は「子供時代をほぼ無くした」と言うほどに勉強し、その成果として優れた大学を卒業し、大学院に進む直前だった。

 この青年の一家は特殊ではなく、教育を重要視する文化がアジア系コミュニティにはある。経済目的で移住した家庭であっても教育熱心さは同じであり、子供たちは「勉強するのが当たり前」の環境で育つ。

  最初に挙げたベイエリアの電車での被害者男性のプロフィールは不明だが、エアビーアンドビーの女性客は韓国生まれのアメリカ育ちだ。UCLAのロースクールを卒業し、官選弁護人を務めている。ユナイテッド航空の医師もヴェトナム生まれの移民だ。彼ら高学歴移民がアメリカで産む二世の子供たちも勉強をする(しなければならない)環境で育ち、やはり高学歴となっていく。その結果、医師、弁護士、IT関連など、学歴必須の職業にアジア系が増えている。現在、アジア系の世帯所得の中央値は81,000ドルと、白人の65,000ドルを大幅に上回っている。

 この事実をハーレムのホームレス女性だけでなく、多くのアメリカ人が意識的もしくは無意識に知り始めている。

 筆者にはそれを証明するエピソードがある。数年前のことだが、ある事情でブロンクスの家庭裁判所に出掛けた。入り口は一般用と、職員および弁護士用に別れており、一般の列に並んだ。金属探知機を通る際、一般用の入り口であるにもかかわらず、係員に「弁護士か?」と聞かれた。ブロンクスという場所柄、列に並んでいるのはほとんどがヒスパニックと黒人であり、その中でほぼ唯一のアジア人だったためだ。のちに別件でブルックリンの裁判所を訪れた際も、やはり「弁護士ですか?」と声を掛けられた。この時は問題を抱えたティーンエイジャーの母親から、なんと更生のアドヴァイスを求められたのだった。

 一般的にアメリカのアジア系は社会に対する自己主張や政治的な主張をあまりおこなわない。こうした特性もあり、かつてはアジア系の実態が知られず、アジア系への差別は「移民」「英語が話せない」「つり目」といった単純な見下しが理由だった。

 だが、ここにきてアジア系の実態が徐々に知れ渡り、「優秀」というステレオタイプが生まれた。それが時には「目障り」で「いらだち」を生じさせ、かつ「嫉妬」の対象にもなり、他の人種からの差別行動を引き起こし始めているのだ。そういう意味で2017年は、アジア系への新たな差別元年となってしまったのかもしれない。
(堂本かおる)

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