議会での授乳が広まりつつある一方、乳児を連れた市議会の出席が認められない日本

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緒方ゆうか議員公式サイトより

 1122日、熊本市議会で緒方夕佳議員が生後7カ月の乳児を抱えたまま本会議の出席を試みたところ、他の市議らと揉め、開会が定刻より40分ほど遅れた、と各メディアが報じた。

 報道によれば緒方市議は、妊娠が発覚した昨年から乳児を連れて会議に参加できないか議会事務局に相談していたものの、前向きな回答が得られなかったために強行したとある。今回の行動には「仕事と子育てを両立し、女性が活躍できるような議会になってほしい」という狙いがあったようだ。

 実は緒方市議は過去にも市議としての仕事と子育ての両立に向けた問題提起を行っている。

 20158月には、東京世田谷区と金沢市への視察の際に、授乳の必要な乳児の同行を認めるよう熊本市議会の都市整備委員会に申し出ている。この申し出は委員全員の同意を得ることができたと報じられている。また20173月には、妊娠9カ月目の緒方市議が、定例本会議で座ったまま一般質問を行ったことを朝日新聞が報じている(妊娠9カ月の市議・緒方さん、座ったまま議会質問)。

 女性の働きやすさや少子化対策が叫ばれ、社会問題とされている一方で、まさにそうした問題を議論している議会の環境・制度整備はいまだ不十分なままだ。

 例えば、都道府県および政令市の議会では「産休」規定が定められているが、市区町村によってはこうした規定が存在しない議会が存在する。過去にwezzyでも報じているように、市議会の中では、育児を理由とした欠席を「事故」扱いとして認めたケースもある(事故扱いされる議員の「育休」。議員はスペシャルでなければならないのか? 怒れる女子会@越谷)。妊娠、出産、育児は果たして「事故」なのだろうか?

 ときおり報じられることがあるが、世界には、女性議員が乳児を連れ、会議の最中に授乳を行える国が多数存在する。今年5月に、オーストラリア連邦議会の議場で、ラリッサ・ウォーターズ上院議員が授乳を行ったというニュースは記憶に新しいだろう。オーストラリア連邦議会では、昨年まで議場に子連れで入ることも認められていなかった。

 翻って日本はどうだろう。国会に子連れで参加した議員はいまだ存在しない。妊娠中より乳児を連れて会議に参加できるよう申し出ていた緒方市議だが、前向きな回答はなかったと報じられている。こうした環境が、仕事と育児を両立しやすいものだとは到底思えない。

 緒方市議の強行的な手段については是非がわかれるところだ。だが、強硬手段を取らざるを得ないような環境をいまだに維持していることも、同様に問題なのではないだろうか。
wezzy編集部)

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