近年、世界では同性愛者であることを公表している政治家が増えてきた。
例えば同性愛者であることを公表していたレオ・バラッカーが、今年6月にアイルランドの首相となった。アイルランドは2015年に、同性婚を合法とする憲法改正の是非を問う国民投票が行われて、62%もの賛成票を得ていた。
ベルギーの元首相エリオ・ディルポも同性愛者であることを公表している。アイスランドの元首相ヨハンナ・シグルザルドッティルもやはり同性愛者であると公表、在任中である2010年に同性婚もしている。
記憶に残っているところでは、ルクセンブルクのグザヴィエ・ベッテル首相だろう。以前から同性愛者であることを公表していたベッテル首相は、今年5月に行われた北大西洋条項機構(NATO)のサミットに、結婚相手のゴーティエ・デストネを連れて参加している。ゴーティエ・デストネは、各国首脳陣のパートナーの記念撮影に「ファーストジェントルマン」として参加している。
竹下氏は、こういった政治家を「国賓」として招いておきながら、そのパートナーが宮中晩餐会に参加することは反対しているということになる。そのような対応をされた相手国の政治家が日本にどのような印象を抱くかは明白だ。オリンピック・パランリンピック誘致の際に「おもてなし」を掲げた国のすることではない。念のため繰り返すが、竹下氏の発言は、政治・外交問題である以前に、そもそも事実婚カップルや同性愛者への差別的発言だ。
自民党は、今年10月に行われた衆院選の際に、公約として「性的指向・性自認に関する広く正しい理解の増進を目的とした議員立法の制定を目指すとともに、各省庁が連携して取り組むべき施策を推進し、多様性を受け入れていく社会の実現を図ります」と「社会・生活安全・消費者」の項目に掲げていた(自民党・衆議院選挙公約2017)。竹下氏の発言は、「多様性を受け入れていく社会の実現を図」ると書かれていた公約と矛盾している。
また自民党は2016年に発表した「性的指向・性自認の多様なあり方を受容する社会を目指すためのわが党の基本的な考え方」の中で、「わが国においては、中世より、性的指向・性自認の多様なあり方について必ずしも厳格ではなく、むしろ寛容であったと言われている。明治維新以降、西洋化の流れの中で同性愛がタブー視され、違法とされた時期もあったが、歌舞伎の女形など性別に固定されないあり方を楽しむ文化が伝統芸能の中に脈々と息づいていることや、「とりかへばや物語」など中世文学作品が残されていることは、古来、わが国で性的指向・性自認の多様なあり方が受容されてきたことを示す一例として挙げられる」としていた。これも「日本の伝統に合わない」という竹下氏の発言と矛盾する。
こうした竹下氏の発言に対しては各所から批判が殺到している。同じ自民党の中でも、野田聖子総務相が、24日の記者会見で「多様性を重んじている人間としては、どんな人も伸びやかに生きられる日本でありたいと。そのために何をすればいいかを常に模索している」と竹下氏を批判。野田氏はかつて、参議院議員・鶴保庸介と事実婚関係にあり、また2011年には事実婚関係にあった男性と入籍をしている(夫婦別姓の推進をしている野田氏は、野田姓を名乗るため事実婚を選択していたと明かしている)。
党内から批判が出るということは、自民党も一枚岩ではない、ということだろう。いったい自民党は、政党としてどのような立場をとるのか。公約の中で、「性的指向・性自認に関する広く正しい理解の増進を目的とした議員立法の制定を目指すとともに、各省庁が連携して取り組むべき施策を推進し、多様性を受け入れていく社会の実現を図ります」と書いている以上、明確にその姿勢を示すべきだ。
(wezzy編集部)
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