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ケータイ小説「七つの大罪」はどこへ消えたのか

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激甘なのに、「虐待」?

 ではブーム以後、つまり2008年以降〜2017年についてはどうか。

 改めてブームの頃の作品と見比べてみて思ったが、やはりテイストは変化している。

 一番大きな変化は、(繰り返し書いてきたことだが)今はもはや、「切ナイ実話」調の作品はまったくウケない、ということだ。特に、ヒロイン・ヒーローのどちらかが死んで終わるような、悲劇的な小説は本当に見なくなった。

 論より証拠だ。最近のケータイ小説の新刊を見てみよう。

 たとえば2017年10月の「魔法のiらんど」文庫新刊。映画館さんプロデュースの『溺愛BEST』は、かなりエンタメ感溢れる短編集である。

>名門高校の特待生・佳乃と、謎だらけの教師・倭の甘いラブ。映画館書き下ろしストーリー。彼の目的は実はエッチでは? と疑った心がとった作戦は? 明日央のほんわか甘いラブストーリー。不良でイケメン、喧嘩も強い杜くんと優等生・綾の恋は!? シグレが描く初ラブストーリー。幼なじみからやっと彼カノになった香織と愁。戸惑う2人を描く大人気ゆーりの幼なじみラブ。図書室で会う敷島くんとのささやかな秘密の時間。彼に惹かれている晴香だったけど――。一ノ瀬亜子デビュー作!

「野いちご」の方の新刊『手をつないで帰ろうよ。』からも、悲惨なノリはまったく伝わってこない。『りぼん』に連載されていてもおかしくない感じの、いかにもな青春ラブである。

>4年前に引っ越した幼なじみの麻耶にずっと恋している明菜。今度こそ告白しようと再会した彼は、イジワルで冷たい別人になっていた。麻耶と同居することになった明菜は、彼が昔と変わらないことを感じて、好きだと再確認する。そんな中、麻耶のファンの女子に倉庫に閉じこめられてしまう。麻耶は必死に探しまわるが…。幼なじみのジレジレ同居ラブ!

 公式サイトのログを遡ってみれば一目瞭然だが、「魔法のiらんど」「野いちご」ともに、『恋空』『赤い糸』的なノリを感じさせる作品はもはや皆無である。ヒロインが男から男へと渡り歩き、レイプされたり流産したり、本当に想った相手と死に別れたり、といった波乱万丈をアピールしている小説はまずない。書籍化されていない作品を見ても同じだ。ランキングに上がってくる人気作のほとんどは、前回書いたような「溺愛」要素を売りにしている。悲惨な「実話」を謳うよりも、非現実的設定上等の激甘フィクションの方が圧倒的にウケはいい。

 悲劇から激甘へ。「切ナイ実話」から「溺愛」へ。バッドエンドよりもハッピーエンドを。

 この変化は非常に大きい。当たり前だが、これを前提とすれば「七つの大罪」の扱いだって大いに変わってくる。激甘を望んでいる読者にとって薬物使用セックスはあまりにハードな展開だし、妊娠だって愛する男との「望まれた妊娠」であって然るべき。ましてや死別なんてとんでもない。

 ……では、「七つの大罪」は完全に解体されたのだろうか?

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