社会

年収800万超の<子なし世帯>増税案が意味すること

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 一方で、すでに単身者よりは既婚・子ありの給与所得者の方が税制上優遇されているという現実はある。ここで今一度、現行制度について見ていきたい。現行制度での「給与所得控除」「基礎控除」は、あくまで年間の収入額に応じての控除であり、未婚/既婚、子なし/子ありは加味されていない。しかし前述のように、「所得控除」にはこの2つ以外にも様々なものがあり、既婚者のみ・子供のいる世帯のみに適用されるものもある。

 既婚者のみに認められているのが「配偶者控除」である。これは、婚姻関係にあり生計を共にする配偶者の給与収入が103万円以下である場合に対象となる控除で、控除額38万円(配偶者の年齢が70歳を超えている場合は控除額48万円)。「収入の少ない、もしくは全くない配偶者を養っているのだから、その負担を考慮して、納税額を少し減額してあげますよ」ということだ。これに該当する主たるケースが、会社員の夫と専業主婦の妻という組み合わせであろう。また、配偶者が年収103万円以上であっても、141万円未満であれば、「特別配偶者控除」として338万円の控除が受けられる(納税者のその年の所得が1,000万円以下の条件あり)。なお、「配偶者控除」も「特別配偶者控除」も内縁関係・同棲の男女には適応されない(社会保険は適応される)。

 続いて「扶養控除」。こちらは、年間合計所得金額が38万円(給与所得のみの場合は給与収入103万円)以下である16歳以上の扶養親族がいる場合に対象となる控除で、当該扶養親族の人数分、それぞれ所定の扶養控除を受けられる。控除額は扶養親族の年齢に応じて変動するしくみとなっており、たとえば、1618歳・2369歳(その年の1231日時点)の扶養親族がいる場合は控除額38万円(住民税33万円)。1922歳(その年の1231日時点)の扶養親族の場合は「特定扶養親族」として控除額63万円(住民税45万円)で、これは1922歳が大学や専門学校等に在学している時期で学費等の負担が大きいことに対する配慮である。かつては16歳以下の扶養親族も扶養控除の対象だったが「子ども手当(現在の児童手当)」の導入により廃止となった。

 つまり、現段階においても税制上、同額の給与収入だった場合<子供のいない世帯>は<子供のいる世帯>よりも多く税金を納めていることになり、<子供のいる世帯>は<子供のいない世帯>より優遇されていると言えるのではないだろうか。政府は、その上さらに<800900万円を上回る子供のいない世帯>に増税を課すことを検討しているということだ。

 結婚も非婚も、子供を持つことも子供を持たないことも、どちらも人生の選択肢のひとつに過ぎない。子育て支援はもちろん大切だ。しかし子供を育てるのは、子供と生計や住居を共にして子供を扶養・養育する立場にいる親だけではないし、子供の居場所となり得るのは家だけではないと、考えることはできないだろうか。保育園や幼稚園や学校、地域などさまざまな場所や人との関わり合いで子供は成長していくはずで、そのように関わる大人たちの中には子供のいる人もいれば子供のいない人もいるであろう。だからこそ、分断しないでほしい。子供のいる人もいない人もより多くの人が子育てに関心を払えることが望ましいのではないか。

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