Q.DSDsにはどのような体の状態がありますか?
ここでは判明時期等「出生時」「思春期前後」「染色体」の3つにわけて、代表的な体の状態を説明しましょう。
(1)生まれた時に判明するDSDs
赤ちゃんが生まれた時、たいていは外性器の形で性別が判明します。しかし約0.02%の確率で、外性器の形や大きさ、おしっこが出てくる尿道口の位置等が、一般的とされる女の子・男の子のものとは少し違っていて、性別の判定にしかるべき検査が必要になる女の子・男の子もいます。
代表的なのは、ホルモン異常によってクリトリスが大きくなって生まれる女の子です。このホルモン異常は命にかかわる疾患であるため、日本では赤ちゃんが全員受ける検査の対象にもなっています。
他にも、尿道下裂の男の子、膣口や尿道口・肛門が分化せずに生まれる女の子、部分型アンドロゲン不応症・混合性性腺異形成・卵精巣性DSDの一部など、さまざまなDSDsがあります。
ここで大切なのは、遺伝子検査等の大きな発展もあって、現在では女の子か男の子かの判定がしかるべき検査で行われていることです。また、DSDsを持つ人々で後に性別変更する人も、まだ検査がしっかりしていなかった時代を含めても、約2~3%と言われています。
支援団体も、DSDsを持って生まれた赤ちゃんの男女の性別判定には反対していません。しかるべき検査で男女の判定をして、性別違和がある場合には対応をするように求めているのですが、社会では今でも「どちらでもない性で育てることを求めている」という誤解・偏見が根強く残っています。
(2)思春期前後に判明するDSDs
この時期で代表的なものは、初潮が無い等で判明するアンドロゲン不応症(AIS)の女の子です。子宮と膣がなく、染色体がXYで性腺が精巣であることが分かり、大多数の女の子は大きな衝撃を受けます。そのため、現在、専門の医療機関では、患者家族の皆さんへの説明は、細心の注意を持って行われています。
一般的には精巣は男性に多いホルモンのテストステロンを作ります。ですがAISの女の子の場合、体の細胞がテストステロンには反応せず、女の子に生まれ・育つのです。過剰なテストステロンはエストロゲンに変換されます。そのため、現在DSDsの領域では、このような女の子の性腺は、男性に特有の精巣ではなく、エストロゲンを作る「機能」を持つ性腺と見なされています。
思春期前後に判明するDSDsには、他にも、染色体はXXで、膣と子宮が生まれつき無かったことが分かるMRKH症候群の女の子もいます。
AISやMRKH症候群の女の子・女性がもっとも悲しむのは、生物学的なつながりがある赤ちゃんを産めないという不妊の事実です。MRKH症候群の女性の場合、性腺は卵巣で卵子が作られていますので、現在世界各国で子宮移植が実施され、赤ちゃんも生まれています。
(3)X・Y染色体バリエーション
学校では、「男性の染色体はXY、女性の染色体はXX」と習っていると思います。しかしこれは、基礎的な知識に過ぎません。確かに大多数の男性の体の染色体はXY、大多数の女性の体の染色体はXXですが、XXY染色体の場合は男の子に生まれ育ちます。Xが1つ(ターナー症候群)の女の子は女の子に生まれ育ちますし、XXYY染色体の人は男の子に生まれ育ちます。XYY染色体の男の子、XXX染色体の女の子もいます。
実は女性・男性の体の違いを決めるのは、X・Y染色体の数ではなく、Y染色体の有無、より厳密に言えば、通常はY染色体上にあるSRY遺伝子の存在なのです。1990年にSRY遺伝子が発見されてから現在までに、胎児期からの体の性の発達には、恐らく約100個以上の遺伝子が関係しているだろうと言われています。生物学は既に、染色体の数ではなく、遺伝子の時代になっているのです。