森戸:私の身近な友だちは片耳が聞こえないのですが、「多分子どもの頃、おたふく風邪にかかったせいだと、大人になってから知った」なんて話しています。あと最近知ったのは、私が大好きな作家さんがいるんですが、その方の弟さんが日本脳炎で若くして亡くなっていたという話。いまだったらワクチンあったのにと、とてもお気の毒です。
大西:日本脳炎は、予防接種が3歳からじゃないですか。ところが養豚場が近い場所(※)で、0歳でかかってしまった子どもの話もあります。日本脳炎が多い地域に出かける場合、リスクが高くなるから早めに接種してもいいということを知らない人もたくさんいると思いませんか。
(※日本脳炎ウイルスはブタの体内で増殖し、その血を吸った蚊に刺されると、日本脳炎に感染する。毎年各都道府県で実施されているブタの抗体保有状況によると、日本脳炎ウイルスは西日本を中心に広い地域で確認されている/参照:https://www.jpeds.or.jp/modules/news/index.php?content_id=197)
宮原:ただ問題は、一時期、日本脳炎ワクチンが足りなくなったときがあったように、打ちたくても打てないこともある点です。希望すれば生後6カ月からでも打ってもらえますが、3歳以上じゃないと認めないという自治体も以前はありました。
大西:うちは沖縄や海外へ行く予定があったので、子どもに2歳半で打たせたんですよ。すると、打つ量が半量である0.25mlだった(本来は0.5ml)けど、効果も変わらないという。「ええ~、じゃあなんでそもそももっと早く打たないの?」と驚きました。
森戸:昔は3歳以上の発症が多かったことや、乳児期に打つべきワクチンはほかにもたくさんあるから、それがひと段落する3歳くらいのタイミングでいいよねって言われてたんですよ。同時接種に馴染みがなかったこともあります。
ワクチンの同時接種は本当に大丈夫? 副反応やリスクはないの?
子どもが産まれると、予防したい病気のワクチンをいくつか打つことになります。しかし、そのスケジュール管理が複雑だったり、「予防接種は毒を打つようなもの」…
オリンピック対策、どうなる?
大西:日本脳炎の情報を知ってるか知らないかでも、リスクが違ってくるのが怖いです。だって、知らずに1、2歳の子ども連れて東南アジアや沖縄に旅行しますとなったら? それで感染してしまったら?
宮原:日本脳炎に関しての指標は厚生労働省が毎年、日本脳炎ウイルスの蔓延状況を調べるため、一部の都道府県でのブタのウイルス抗体獲得状況を調査してアラートを出しています。
一同:そ、それは、養豚関係者じゃないと見ないような……(笑)。
森戸:厚労省のやり方がベストじゃないということがよくわかりますね。本当だったらもっと広く知られるべき情報なのに。厚労省は要望がないことはやらないですしね。
ナカイ:厚労省は、麻疹(はしか)の流行情報もちゃんと出してこないし。なんで千葉が出しているのに、東京は出さないんでしょう。
宮原:オリンピックに向けて対策しなくちゃいけなくなるからでしょう。
森戸:大騒ぎになりますしね。大きく報道されなくなっただけで麻疹も風疹も感染者数がゼロの月はない。
大西:そもそもオリンピックのボランティアにワクチンを無償で接種する予定はあるんでしょうか?
ナカイ:ワクチンを打つ費用くらい持ってあげなさいよって思いますけどね。蔓延しても困るし。
宮原:韓国のピョンチャンオリンピックではボランティアを含む関係者8万人にも髄膜炎菌のワクチンを接種しました。日本がそれをしないとしたら、恥ずかしいですね。