人生をどのように歩んでいけばいいのか。かつては40歳の「不惑」を境に惑いがなくなるといわれていましたが、現代を生きる女性にとっては、社会構造や恋愛観の変化、そして出産可能なリミットなど、むしろ迷うことが多くなる年代です。
女性の愚かしくも愛おしい “ブス”な内面や日常を、鋭い観察眼と緻密な構成で描く演劇ユニット「ブス会*」は、谷崎潤一郎の「痴人の愛」を翻案し40代の女性が若い青年へ向ける複雑な愛情を描いた「男女逆転版・痴人の愛」を、12月8日から上演予定。
主宰者で、AV監督やTVドラマの脚本・監督としても活躍する劇作家・演出家のペヤンヌマキさんに、作品についてお聞きした前篇に続き、40代女性の複雑な愛情や欲望に対する考えをうかがいました。
▼インタビュー前篇
女性が年下男性に魅せられるとき、恋愛感情なのか母性本能なのかわからなくなる戸惑い
愛でたい側になってきた
――原作のような、壮年の男性から年少の女性へという“愛情”は、お金や権力などがまつわるとみられがちであっても世間で受け入れられる風潮があるのに比べ、立場が男女で逆転すると、「みっともない」という非難や揶揄をされがちです。
ペヤンヌマキ:最近はわりと、ポピュラーになりつつあるんじゃないでしょうか。開き直っちゃえばいいなんて気もしますけどね。
男性は風俗など、欲望を満たしたり癒されたりするコンテンツがいろいろとありますよね。女性にはいままでそれがあまりなかったけど、最近出はじめているなと思うんです。以前、男性が温泉に入るのを眺めるバラエティ番組「メンズ温泉」(2015年、BS JAPAN)を撮ったときに、「年下の美しい男性を愛でてもいいじゃないか!」という気持ちにすごくなりまして、私もそれで開き直りました。
若いころは、自分が男性に愛でられることを考えていましたが(笑)。でも、自分が愛でたい気持ちになってきたのは……やっぱり、癒されたいんでしょうか。癒しを求めたときに、美しいピュアな少年をただ眺めていれば満足、みたいなところに行き着いたのかもしれません。
――年齢を重ねると女性自身も、世間の揶揄を内面化して、性的な欲望からあえて距離をおく姿も見られます。
ペヤンヌマキ:女性の肉欲って、セックスから離れれば離れるほど、セックスそのものはなくてもいいかな、みたいな気持ちになっちゃうところがありますよね。セックスをたくさんしている期間の方がさらに貪欲になると思うんですけど、年齢的に一回疎遠になって離れてしまうと、精神的に処女に戻ったかのようになってしまう(笑)。そんなことってないですか?
40代は、おそろしい。
ペヤンヌマキ:20代って、セックスアピールがすごい人や「この人とセックスがしたい」と思う相手を好きになるような、性欲に惑わされる部分があって。そこから30代を経て、まるで中学生のときの「憧れの先輩とのエロいことなんて考えられません!」っていう、好きな対象とセックスが結びつかなくなってしまうような心境です(笑)。
そういう心境のときにAV監督の仕事をすると、遠い世界の人たちを撮っているかのような気持ちになりますね。演出として撮らないといけないものがAVは決まっているので、気分的には陰から見ていたいのに、モロに寄らなきゃいけないから、苦しい気持ちになるときもあります。
――いつになったら、それを乗り越えられるのでしょうか。