40歳を迎え、好きな対象とセックスが結びつかない「処女の心境」に陥った/ペヤンヌマキ「男女逆転版・痴人の愛」インタビュー後篇

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――ブス会*の作品では、女性同士の関係性や行動のリアルさが好評を博しています。「男女逆転版・痴人の愛」では、主人公「洋子」は、青年の「ナオミ」の恋人である若い女性「熊谷」の存在をSNSのリサーチで探し出し、熊谷も匂わせ女子ですね。

ペヤンヌマキ:私自身が嫉妬深いから、彼氏や気になる人のSNSを結構チェックしちゃう方なんです。たぶん、嗅覚みたいなものが鋭いんでしょうね。何の気もなしにチェックしたのに、絶対に何らかの証拠を見つけちゃうんですよ……

それでチェックすればするほど、匂わせ女性って絶対出てくるじゃないですか。やだなーって思いつつも、見ちゃう。匂わせとかする女性に対して一回「こいつは……」って感じてしまうと、ついつい見ちゃいません(笑)? 「なんでこんなことに時間割いているんだろう」と思いつつ、もはや好きになっちゃっているんじゃないかってくらい(笑)。

育てる存在が欲しい

――洋子は、ナオミと熊谷の交際を「親としての愛」と言い訳して妨害します。子どもを持つのか持たないのかは、この年代の女性にとって大きなモヤモヤです。

ペヤンヌマキ:自分もそうです。可能性はまだ少しはある年代ではあるけど、限りなく薄くはなってきて、子どもがいない人生を歩むのかなという心境に寄ってきてはいます。そのうえでどう生きるのかっていうことを、考えていかなくてはと。でも、最後まであがきますよね結局は。答えは見つかりません。

ただ単に育てる存在が欲しいだけで、それが別に自分が産んだ子どもじゃなくてもいいのではないかという思いもあります。育てる存在が今後一切自分の人生にないかと思うと、寂しいじゃないですか。だから産むことにこだわってリミットを気にしていたけど、子どもの代用として、何か別の育てるものを見つけるのでも、生きていけるのかなという気持ちにもなってきましたね。

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男女問わず年齢を重ねることは、人生経験が豊富になり人間性も豊かになる。それはよいことのはずだからと自分では思っているつもりでした。でもそういえば、ふと街中でお店の窓に映った自分の姿を目にしてちょっとガックリ、なんて経験が頭をよぎることを思えば、恋愛観や容姿について「世間」が強いてくる認識に、気づかない間にがんじがらめにされてしまっているのかもしれません。

ブス会*の作品に心がザワザワさせられるのは、身に覚えのありすぎる感情を抉られるからだと感じていましたが、迷える年代の女性の自意識を明文化して解放してくれるからなのかもしれません。

Profile

ペヤンヌマキ:1976 年、長崎県出身。ブス会*主宰 / 脚本・演出家 /AV監督(ぺヤングマキ名義)。早稲田大学在学中、三浦大輔主宰の劇団「ポツドール」の旗揚げに参加。AV監督として活動する傍ら、2010年、演劇ユニット「ブス会*」を旗揚げ。以降全ての作品の脚本・演出を担当。現在はフリーの映像ディレクター・脚本家としてテレビドラマなども手がける。
【著書】『女の数だけ武器がある。 たたかえ!ブス魂(幻冬舎文庫)

Infomation

ペヤンヌマキ☓安藤玉恵生誕40周年記念ブス会*
『男女逆転版・痴人の愛』
201712819
こまばアゴラ劇場

【地方公演】
リーディング『男女逆転版・痴人の愛』
2018121
久留米シティプラザ

詳細は、http://busukai.com/

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