女子の理系離れが起きる6つの理由 男女の賃金格差解消の肝となるSTEM教育を促進するには

【この記事のキーワード】

女子がSTEM教育から遠ざかってしまう6つの理由

 良くも悪くも、教育が果たす役割の一つにトラッキングが挙げられます。トラッキングとは、個々人が持つ能力に応じて、受けられる教育の水準や中身が決まることで、学歴や学校歴、普通教育か職業教育なのか、理系か文系か、などが具体例として挙げられます。ドイツのように強力なトラッキングが早い段階でかかる国がある一方、日米の様にトラッキングが比較的緩やかな(学校歴には当てはまらないかもしれませんが)国も存在します。このトラッキングが女子のSTEM離れの契機となるので、日本と制度が近いアメリカでなぜ女子のSTEM離れが起こるのか、日本の参考とするために見ていきましょう。

 一つの要因は成績です。生徒は過去の成績が良かった科目を選択しがちです。STEM科目での男女間の成績差は小学校入学時点では存在しないものの、小学校高学年ぐらいになるとわずかな差が見られるようになります。このわずかな差が科目選択に影響し、女子のSTEM離れを引き起こしています。しかし、この成績と科目選択間の因果関係は女子のSTEM離れのほんの僅かな部分しか説明できません。

 2つ目の要因は自信です。成績自体よりも、「STEM科目で良い成績が取れる」という自信と「STEM科目は価値がある」という考えが、STEM系科目の選択に影響を及ぼしています。STEM科目に関する男女間の自信の差は小学校低学年で既に出現し始め、生徒達自身が男子は数学・女子は国語、という考えを持つに至っています。

 そして、自信と関連するものとして「成長思考(Growth Mindset」があります。成長思考を一言で表すと、「やればできる」という考え方のことです。成長思考のある生徒は努力を積み重ねて成績が向上したり、新たな分野にもどんどん挑戦していきますが、これがない生徒は努力を積み重ねられなかったり、得意なものごとだけに固執してしまいます。高校段階になると、男子は女子と比べて数学分野における成長思考が明確に高くなります。この結果、STEM科目の男女間格差や、女子のSTEM離れが加速していきます。

 しかし、この数学分野における成長思考は可変的なものです。実際に高校で数学分野における成長思考を強調した授業を実践したグループでは、男女間で成長思考の度合いに差は生じませんでしたが、そうでないグループでは男女間で成長思考の度合いに差が生じました。

 3つ目の要因は教員です。優秀な教員の下では女子のSTEM離れは抑止されますが、そうでない教員の下ではこれが加速してしまいます。教員の影響は他にもあります。

・小学校低学年時に数学に自信のない女性教員が担当になった場合、そうでない場合に比べて「男子は数学、女子は国語」というジェンダーステレオタイプが生徒間で強化される
・小学校低学年時に数学に自信のない女性教員が担当になった場合、そうでない場合に比べて女子の数学の成績が下降する
・数学の成績がよくない教員が担当になった場合、数学の成績に与える悪影響が男子よりも女子で大きく出る
・「女子は数学に向いていない」というジェンダーバイアスを持つ教員が担当になった場合、女子のSTEM離れが加速する

 さらに、STEM科目における女性教員の不足も女子のSTEM離れにつながってしまいます。STEM系における女性教員の存在は、それ自体が生徒や学生のロールモデルとなるため、女子学生のSTEM系科目の成績が向上したり、よりSTEM系の科目を選択するようになります。

 4つ目の要因は家庭です。子供が最初にジェンダーバイアスに接するのは家庭です。子供は両親のことをよく見ています。夫の好みが多かれ少なかれ優先されるような家庭であれば、子供が「男性は女性よりも優先される」といったジェンダーバイアスを形成する足掛かりとなってしまいます。母親が「男子は数学・女子は国語」というジェンダーバイアスを持っていると、それは容易に子供に受け継がれてしまいます。また、母親が数学に自信を持っていなかったり、数学における成長思考を持っていなかったりすると、この影響が息子よりも娘の方で大きく出てしまい、女子の数学離れが加速していきます。

 5つ目の要因は社会におけるジェンダーのあり方です。科学や数学は女性のものではないというステレオタイプの強い社会ほど、これらの科目での男女間学力格差は大きくなり、これに伴いSTEM系科目の選択でも男女間の差が広がる傾向があります。さらに、STEM分野の仕事に、出産後に仕事と家庭の両立が難しい、性別に基づく昇進・昇給の格差がある、セクハラが起きやすい(ないしは隠蔽されやすい)、などのイメージがある社会では女子のSTEM離れが加速します。

 6つ目の要因は数学に関するイメージです。以前、女子は男子と比べて自信を持ちづらい男子の前では競争を避けがち、という男女の学習行動の違いを紹介しましたが、これは数学においても当てはまってしまいます。数学に「難しい」とか「競争的だ」というイメージが強くつきまとっている環境では、女子はSTEM系を避けがちになってしまいます。ちなみに、カギとなるのはSTEM系科目に関するイメージであるため、女子校であるからと言って女子のSTEM系科目の成績が向上したり、女子がSTEM系の科目をより多く選択する、ということはないようです。

1 2 3

「女子の理系離れが起きる6つの理由 男女の賃金格差解消の肝となるSTEM教育を促進するには」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。