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ダルちゃん、インテグレート……「女性の抑圧」を描く作品のモヤモヤ分岐点は”誰に何を語らせるか”

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『東京タラレバ娘』(講談社)

 25歳を超えた女性に対する表現といえば、去年ドラマ化もされた漫画『東京タラレバ娘』(講談社)にも、「酔って転んで男に抱えて貰うのは25歳までだろ」「もう女の子じゃないんだから」「30代は自分で立ち上がれ」というセリフがありました。インテグレートのCMとさほど変わらないメッセージですが、炎上するどころか「刺さる」というアラサーの読者、視聴者が続出しました。これも考えてみれば、『民衆の敵』と同じく「カワイイに代わる力を持って立ち上がらないといけない」と言っているのであって、単に「抑圧を受け入れて適応しろ」と言っているわけではありません。

 ただ、このセリフにモヤモヤしていた人も多くいました。理由は、そのセリフを言ったのが、KEY(坂口健太郎)という25歳のモデルだったこと、KEYがクソ男なのかそうじゃないのか曖昧だったということが大きいのだと思います。

 同じセリフを、坂口健太郎演じるKEYではなく、ダルちゃんに出てくるスギタのように、あきらかに女性を抑圧しているとわかる、もっと言えばミソジニーを持った悪役に言わせたら読者は、「悪い人が言っているのだから、これは反発を覚えていいパターンだ」と感じ、この描写・作品は、抑圧をあきらかにして、そこに対して嫌悪感を覚えるためにあるのだなと気づくことができます。

 ただ、KEYという存在は、当初はヒロインの倫子を鼓舞する存在なのか、単に嫌な奴なのか、しかもそれを単なるおせっかいで言っているのか、ミソジニーから言っているのかがけっこう謎でした。なまじかっこよくて、ヒロインの倫子ともいい関係になったりするけれど、それが一夜限りの関係なのか、実はそこから本当に良きパートナーになるのかが見えにくく(とはいえ、なんとなくやっぱり王子様であるというのはみんなの間でも自明で)、しかも言っていることも、上から目線だけど、間違ってもいない。決して本当のクソ男ではないという、曖昧な「善」のキャラクターが、抑圧するような、その実、女性に抑圧から解放されてほしいような微妙なセリフを言ってくるからこそ、ある人は「刺さる」といい、ある人は「これはどうなのか」と反論をしたのだと思われます(ただ、KEYは作者自身の目線を投影しているそうなので、そう考えればまた別の見方もできそうなのですが)。

 あのKEYが一目でわかるミソジニー持ちのクソ男であれば、こんなに混乱することはなかったのです。なぜなら、クソ男が「もう女の子じゃないんだから」と言ったら、ヒロインは「うるせー知るか」と言い返せるし、もしヒロインが言い返さなくても、読者が「うるせー、お前が言うな!」と読みながら突っ込めるからです。そのとき、「イケメンである」か否かは関係ありません、重要なのはミソジニー男か否かという一点だけなのです。KEYのキャラクターに曖昧なところがあるからこそ、続きが気になって連載を読み続けてしまう人はいたわけだし、最後の最後まで見れば、抑圧を助長する意図だけでこの作品が書かれていたわけではないことも理解できたわけですが。

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