
Photo by 赵 醒 from Flickr
私が神戸から東京に来て、もう10年が経とうとしている。地元は好きだが、仕事も恋人も東京に存在している現在、いつ神戸に帰ることができるのかわからない状況だ。
誰から強制されたわけでもなく、自分で選んで東京で暮らしているのに、時折、無性に何かを間違えたんじゃないかと少し不安になる。それは神戸が恋しくなったサインだと思っている。地元に残っていたら、もっと外の世界を見てみたかったと後悔していたと思うが、住み慣れた町と、幼い頃から同じ時を過ごしてきた友人たちと離れてしまったことは、やはり寂しいのだ。
日本国内でさえそうなのだから、地元が別の国である場合、恋しさはより募るだろう。
「私にとって、日本は何年住んでも外国。だからいつもどこか寂しい」
そう語ってくれたのは、今回の上京女子、アミ(仮)だ。

今日の上京女子・アミ(34)
今日の上京女子/アミ(仮)34歳 外資系化粧品会社マーケティング
私とアミが出会ったのは、私が大学3年の時だった。韓国の大学を中退し、日本の大学に入り直したという彼女は、他の韓国人留学生とは一線を画していた。
韓国人留学生はたくさんいたけれど、その多くは黒髪ロングで、化粧も韓国の流行を取り入れたもの、一見して韓国人留学生だとわかったものだが、アミは髪を明るく染めて綺麗に巻いており、メイクも日本の最先端のものでネイルアートもばっちりだった。今の日本人女子と韓国人女子はメイクもファッションもそんなに違わないが、その頃はくっきり別の文化があった。
アミが日本に興味を持ち始めたのは、韓国の大学に入学してすぐのことだった。もとから語学の勉強が好きだったため、英文科を志望していた。しかし、落ちてしまったことで第二志望だった日本文学科に入学して日本語を学ぶ楽しさに目覚めたそう。
韓国で日本のテレビ番組を見るようになったアミは、「日本人みたいに日本語を話してみたい」と思ったという。日本語には、韓国語にない発音があり、日本人のようなアクセントで完璧に日本語を話す韓国人はかなり少ないらしい。「難しそう」「できる人が少ない」といったハードルは、アミのやる気をそぐどころか負けず嫌い魂に火を点けた。
「できる人が少ないなら、私がしてみよう」そう決めてから、日本語の勉強にのめりこんだアミは、私が大学で出会った時には、すでに完璧な日本語を操るようになっていた。