社会

LGBTコミュニティ、この20年のあゆみ〜司法とメディアの移り変わり〜【SHIPにじいろキャビン10周年記念シンポジウム】

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一方、三橋さんは「トランスジェンダーの場合、火の粉が飛んでくるからから裁判はやめてほしいという声はあることはあるが、それほど大きなものではなかった」と言う。

三橋「トランスジェンダーの場合、戸籍の性別変更を求める裁判が80年代からあり、ずっと負け続けていたが、2001年の集団提訴では、結果的に全て負けたものの、裁判所から『立法により解決されるべきである』という言質を引き出せた。性別変更の方法については、新たに特例法を作るべきという考えが主流だったが、私のように戸籍法113条の改正・適用でいくべきと考える人もいた。そうした方式の違いはあっても、戸籍変更ができるようにすることに反対する人は、トランスジェンダーのコミュティでは、ほとんどいなかった」

メディアでは「LGBT」という用語が多用されるが、L/G/B/Tそれぞれが抱える困難やニーズはそれぞれ違う。同じく、それぞれのコミュティもまた、違った雰囲気があるということなのだろう。置かれた状況の異なる「LGBT」は手を組むことが出来るのか。話題は同性婚に移る。

風間「結婚制度そのものにたいする議論もある一方で、同性婚という制度が無いことで不都合を感じている人もいる。そうした中で、意見を一致させる状況は作りにくい気がする」

中川「同性婚の問題は私も弁護士として関わっているが、婚姻制度の否定を強烈に打ち出すべきだと考える人もいれば、男女別姓の問題のように少しでも納得の行く制度にしようと活動している人もいる。すぐにベストな回答が降ってくるわけではない。同性婚も、同性パートナーシップも、その先に何を見るかが肝心。いまある婚姻制度を同性間でも使えるようになりさえすればそれでいい、と言われれば違うと思う」

牧村「私は、同性婚の法制化を求める申立人のひとりだけど、結婚制度を使わないで生きることにした。それは「いえーい!同性婚!」と思ってやっているのではなく、日本の結婚制度における性別による不平等を是正したいと思ったから。日本には、女性だけが再婚禁止期間が設けられていたり、女性は16歳、男性は18歳と性別で結婚できる年齢に差が設けられていたりする。法律上、男性と女性で扱いが異なると、例えば同性婚が法制化されても、なんでレズビアンは16歳で結婚できて、ゲイは18歳にならないと結婚できないのか、などおかしなことが起きてしまう。だから平等な制度を必要な人が使えるようにすればいい。結婚制度を反対と言っている人の意見に耳を傾けるけれど、その人には『結婚制度を使いたい人になんておっしゃいますか?』とも聞きます」

性的マイノリティを取り巻く問題に限らず、どんな社会問題にも、考えや方法論の異なる立場がある。ではいかに社会を変えていけば良いのか。参加者の一人から「誰を連帯する味方と考え、誰を便宜上敵にすればいいのか」と問われると、三橋さん、風間さんはこう答えた。

三橋「コミュニティの中で意見の違う人間がいても、それは敵じゃない。少数派は共通の目標に向かって連帯した上で、どれだけ多数派を味方に取り込めるかが大事。ただでさえ少ない仲間の中で敵対関係を作るのは愚の骨頂。本当の敵はマジョリティの権益を守るために、マイノリティの人権を抑圧する人たちで、そこをはき違えてはいけない」

風間「立場が違うのは当然。私が当時カミングアウトを出来たのは、それなりの条件が整っていたからだと思う。違う条件の人に同じことを求めても難しい。私はみんなでカミングアウトしましょうと言いたいわけじゃない。カミングアウトした人をカミングアウトしない人が否定するのでもなく、カミングアウトしない人をカミングアウトした人が否定するのでもない、様々な運動の関わり方を尊重できるようになったらいい」

最後に司会者にコメントを求められた各登壇者のコメントを紹介したい。

牧村「ぜひ書いていってください。カミングアウトしてほしいということではありません。名前や顔を出さなくても、インターネットで手軽に、無料で書けるようになっている。タレントや学者や物書きじゃなくても言いたいことを言える時代です。だから言いたいことを言っていきましょう」

中川「法律家もみなさんとこの時代を前に進めていきたいという思いで行動しています。風間さんがゲイコミュティからのバッシングを紹介していましたが、応援の手紙をくれた人もいました。20年経ったいま、府中青年の家事件のお話をする機会が増えましたが、必ずイベントの後に『僕も傍聴していた』『20年前、記者会見をみて自信を持った』と言ってくれる人がいます。行動することで人が動きます、マスコミも、研究者も動きます。大変だったけれど、目標に向かってみんなで動くのは楽しいんです。法律家も、みなさんと一歩を踏み出すつもりでいます。一緒にがんばれたらと思っています」

三橋「府中青年の家から20年、SHIPが開設されてから10年。これだけ日本社会は変わったのです。いろいろ細かな利害関係はあったとしても、多くの人がそれぞれの立場で身体を張って頑張ってきたからこそ世の中を変えることができた。10年、20年先、もっと良い社会になることを信じて頑張りましょう」

風間「裁判には、ネガティブな意見もポジティブな意見もありました。それらはそれぞれが置かれている状況の異なる中で出てきた意見だと思います。コミュニティや支援の関わり方にはいろいろあります。お互いの立場を否定するのではなく、共存しながら、自分のできることを探していけたら良いのかな、と思います。これから日本ではいろいろな形で裁判が起きると思います。裁判は過酷な側面もあります。私たちも仲間が減っていくという経験をしました。裁判だけでなく、関わり方の多様性を互いに尊重しながら、活動が続いていくようにしたいと思います」
(取材・構成:wezzy編集部)

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