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はるな愛への「オッサン化」嘲笑に見る「女らしさ」…女ってそんなに美しい生き物?

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はるな愛オフィシャルブログより

 女と男の容姿は違う、と自明のことのように言われる。胸や性器以外でも、男性は筋肉質でワキなどの体毛が濃く、女性は肌が綺麗で体毛が薄いなどの特徴が「男らしさ」「女らしさ」のひとつの指標にされている。しかし男性で体毛が薄く肌がきめ細かな人もいれば、女性で体毛が濃く肌が荒れがちな人もいるわけで、なんならスッピンの顔面だけではどちらの性別か判断がつかないことなど実はざらにある。40代以上の年齢になると特に顕著だ。おじさんなのかおばさんなのか、わからなくなったりする。

 だから人前に出る際、化粧をして一目で「女」だと認識される髪型や服装、靴やバッグなどで装う女性は多いだろう。ノーメイクでラフな格好だったら、「女らしさ」が滲み出ないのはおかしなことでもない。数年前に“おやじ女子”というフレーズが流行り、篠原涼子主演の『ラスト・シンデレラ』(フジテレビ系)というラブコメ連続ドラマが高視聴率を記録した。

 このドラマの触れ込みは、<女性であることを時に忘れてしまうほど、なりふり構わず仕事に没頭する現代の働く女性たち。そんな彼女たちの中には、過労やホルモンバランスの崩れから髪の毛が薄くなったり、男性のような濃いヒゲが生えてきたという人も見られるそう。最近「オス化している」と思ってしまうことってありませんか?>。作品がヒットすると、女性向けの雑誌なども「おやじ女子にならないで!」と警鐘を鳴らすなどしていたことを記憶している。

 美魔女と称される熟年女性たちの努力を見るにつけても、「女性であること」というか、「他者から女性として見られる容姿であること」は、誰しも意識して保たなければ維持できないのだと思う。その意識が、化粧をはじめとした美容であり、ファッションであり、言葉遣いや仕草だったりするのだろう。意識しなければ誰でも同じ人間として男らしくも女らしくもない見た目になっていくのではないだろうか。

 こんな話をしているのは、1211日放送の『名医のTHE太鼓判! ストレスで寿命は縮まるのか余命宣告SP』(TBS系)で、ゲストの1人として出演したタレントのはるな愛(45)が“オッサン”扱いされていたからだ。

 はるな愛は男児として生まれたが、性別適合手術を受け、女性らしい外見で生活している。テレビでは“おねえタレント”の括りだ。番組では、ゲスト出演者たちの余命ワーストランキングを発表し、彼らの私生活に密着。余命ワーストランキング6位だったはるなは、昨年20歳年下の彼氏との同棲が報じられていたが、紆余曲折があって現在は破局。失恋の寂しさを紛らわせるため、友達と食事や飲みに行くようになり体重が増加したと自ら語った。そして、そんなはるなのことをナレーションは、「体重の増加に加え、はるな愛ももう45歳。オッサンだ」と表現。その後は、はるなが受けた健康診断の結果やはるなの私生活の様子が紹介されていく。はるなは、経営している飲食店とカラオケスナックで働き、深夜に帰宅。入浴をして、最近体毛が濃くなってきたためレーザー光線での脱毛を行い、就寝。はるなが大いびきで寝ている姿に対しても、「寝ている姿は、完全なオッサン」とナレーションが入る。

 はるなの体毛が濃くなってきていることや、はるなが大いびきをかいて眠っていることから、「女になったはずなのに、オッサン化している」としていたわけだが、そもそも生まれた時から女性だったとしても、体毛は生えるしいびきだってかく。個人差はあれど、若いから濃い体毛が生えてこない、いびきをかかない、なんてこともない。ドラッグストアに女性向け脱毛グッズが多種多様に並び、脱毛サロンだってたくさんある。性別に関係なく「人間」なら誰でも生える体毛やいびきに「オッサン化」というフレーズを当てはめることへの違和感を強く覚えた。

 「オッサン化しているはるなのことを誰よりも心配している人がいる」として、インタビューVTRに登場したはるなの父親は「親にしたらもうメチャメチャ心配ですもん」「40(歳)過ぎたらね、元々男の体やからね、肥えてくるし、たるんでくるし、髪の毛も禿げてくるかもわからんね。まあ、戻れるものなら、男に戻ってほしいですね」と、“本音“を語る。この時のナレーションも、「父親も心配するほど、オッサンになったはるな」と、やはりはるなを「オッサン」と呼んでいる。はるなが性別適合手術を受けたのは1995年。かれこれ22年前になるが、四半世紀近くの年月を経ても「男に戻ってほしい」と言われてしまうはるなが気の毒になった。

 この「オッサン化」というフレーズは、とうの昔に性別適合手術を受け女性として人生を送っているはるなのことを未だに「女性」として認めず、女のふりをしても男なのだ、と烙印を押すような使われ方をしていた。実際には女でも男でも、年齢と共に自然とホルモンバランスは変わっていくし、体毛は生え、頭髪が薄くもなり、いびきもかくのに、わざわざ「オッサン化」と強調するのは、本物の女性はなんら努力しなくとも「女らしさ」があるといいたいのだろうか。前述の通り、「女らしさ」は意識して構築しなければ大体消失する。はるな愛がおかしいわけではない。女も男も、そんなに綺麗な生き物ではないのに、女だけ綺麗なもののように扱うことがおかしい。毛が濃くてハゲでいびきをかくのはオッサンだけではなく、そして毛が濃かろうと頭がハゲようと何だろうと女は女である。

中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

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