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性被害がもたらしたPTSDや精神疾患。ずっと自分を大事にできなかった私が自己肯定感を回復する過程

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「休む」ことを練習する。Photo by Mitya Ku from Flickr

 私は昔から自分に自信がある部分とない部分が極端でした。自分が「努力した」と実感できるものや、自分の感情や直感には自信があるのですが、「周囲と比較して自分はどのくらいの位置にいるのか」「人からどう見えているのか」はわからず、自信はまったくありませんでした。そんななか、性暴力被害によって抱えたPTSDなどの影響で心身を壊してしまい、生活がままならなくなりました。それによりさらに自己肯定感は下がっていきました。結婚生活でもパートナーであるくまとの関係がふたりだけの世界に閉じてしまったことから、不健全なコミュニケーションが常態化し追い詰められていきました。

 そんな私でしたが、「自分を大事にする練習」を積み重ねたことで心身が健康になり、人間関係も環境も驚くほど好転しました。自分の経験だけでなく勉強をしたりさまざまな人と接していくなかで、自分がやっていたことが心身の回復にどう影響していったか、自己肯定感を回復させるには何が必要で何が効果があったのかがわかるようになりました。

 私は自分を大事にするための訓練を「心の筋トレ」と呼んでいます。今回は私がどういう経緯でどのように「心の筋トレ」を始め、変化していったかお話します。

人生のなかで一番つらい症状

 私は大学卒業後、身体が思うように動かず、寝込みながらなんとか仕事をしてはなくしをくり返していました。そのころ、10年ほどずっと飲みつづけていたベンゾジアゼピン系という依存性の強い種類の向精神薬を減らし、よりひどい離脱症状が起きました。そのことを通っていた精神科の医師に伝えたところ「やめたことで離脱症状が出る薬じゃない、薬で抑えられていた本来の症状が出ているだけだ」と症状自体を認めてもらえず、精神科を変えたことがありました。

 このときの離脱症状や後遺症では、生きてきて一番の身体的苦痛を味わいました。息ができなくなるほど全身の筋肉が硬直し、一日中手足がしびれ、頭が回らなくなり、片づけをしても気づいたら散らかっていて一日中片づけをしつづけ、買い物にいっても何をしていいかわからなくなり、一秒前に話したことも忘れ、言葉を発することも苦しく、会話が困難になる……。それまで抱えていた精神疾患の苦しみとはまったく別の種類の苦痛だったのです。

 変えた先の病院の医師A先生によると、その薬でそうした離脱症状が出ないわけがないということでした。しかしそれよりも、症状によるストレスとショックで頭と身体がパニック状態を起こしているほうが問題ではないかといわれました。

自分が追い詰められてしまう環境

 診察のなかで自分が精神疾患を抱えた経緯を話したところ、A先生に自分の認知の歪みを指摘されました。A先生は、

「あなたはPTSDは治ってる。自分で治したんだよ」
「あなたは『自分が悪い。周りはやさしくしてくれているのに』とばかり言っているけど、問題があるのはあなたじゃなくてあなたの家族や周り。問題を着せられてきたんだよ」

といいました。ずっと「自分が周りの害になっている」と思っていた私は、衝撃を受けました。

 本来の問題は、周囲の人が他責傾向が強いことと私が自責傾向が強いことで、自分の問題と相手の問題を切り分けられていないことだったのです。引きつづきその病院に通院することになり、投薬なしでカウンセリングのみの治療を始めました。

 カウンセラーさんにも、こういわれました。

「あなたはどんなボールを投げられても走って拾いにいって、相手が取りやすいように渡そうとする。そうすると走り回っていることに誰も気づかない」

 メサイアコンプレックスを抱えていた私は、自分のために生きることができなかったのです。周囲の責任を背負い、人のために走り回るけれど、自分にも周囲にもその自覚はなく、追い詰められる循環ができていたのです。逆に健全な関係を築きたい人からすれば、過度な自責や先回りは居心地が悪かったことでしょう。

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卜沢彩子

1987年生まれ。子どもの頃からの度重なる性被害経験を、2009年から実名・顔出しでサバイバーとして発信。個人やNPOで支援・啓蒙活動をつづけている。2016年に複雑化した社会問題を解決するためにA-live connectを開業。恋愛・性をはじめとした人間関係やコミュニケーションに関する相談や講演活動、記事執筆、SEX and the LIVE!!プロジェクトの運営など場作りを行っている。英才教育を受けたオタク。和柄とねこが好き。

twitter:@ayakourasawa

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