
左から清田代表、川村エミコさん、森田専務(撮影/尾藤能暢)
“失恋ホスト”として1000人以上の女性たちのお悩みに耳を傾けてきた桃山商事と、最新著書『生き抜くための恋愛相談』(イースト・プレス)を読んだ、たんぽぽの川村エミコさんとの鼎談。前編では、川村さんが個人主義者であるという、意外とも思えるカッコいい一面が明らかになりました。
後編では、「でも、結婚をせず、ずっと一人でいることに恐怖を抱いている」「それなのに、年を重ねるごとに恋がし辛くなっている」という、複雑なジレンマについて、桃山商事が掘り下げていきます。
▼前編
恋はケースバイケース〜たんぽぽ川村エミコさんの超個人主義な恋愛観
複雑化する38歳
清田代表(以下、清田) 一生一人かもしれない、結婚ができないかもしれないというのは、なぜ、そう思うんですか?
川村エミコ(以下、川村) 38歳という年齢は大きいですよね。38歳になると、男性と家で二人きりになっても、そういう関係にならないですから。それが、35歳以上と以下の違いだと思います。
清田 ちなみに、前回の恋はどうやって始まったんですか?
川村 違う二人の人から、「川村に合いそうな人がいるから紹介するよ」と言われて、会ってみようと思ったのがきっかけです。みんなで食事会をしてLINE交換をし、向こうから積極的にアプローチをしてくれて……という感じで始まりました。
清田 そのときは、今みたいなブレーキはかからなかった?
川村 かからなかったですね。合わないかもしれないという気持ちはあったけど、他に相手がいるわけでもないし、せっかく相手は好きだと言ってくれてるし……という感じでした。35歳ということもあって、後先を考えていなかったんだと思います。
森田雄飛(以下、森田) 3歳という差が、それほど影響を与えるものなんですね……。35歳と38歳、川村さんの中では、どういう違いが大きいのでしょうか。
川村 自分自身のエネルギーがなくなるんですよ。自信がなくなって、私は無理だと思ってしまう。こちらから仕掛けても断られるんじゃないかと想像して、いざというときに踏み込めなくなるんです。やっぱり、38歳は傷ついたときの落ち込み方が、途轍もないんですよ。ブラックホールのレベルがすごい。前の彼と別れた後もひどくて、『ZIP!』の枡(太一)アナが『ポンポンポポポンZIP!でポン!』とやっているのを見るだけで、涙が出てきましたから。そのときに、「あ、私、傷ついてる」って実感しました。弱音も吐けなくなってくるし……。
清田 弱音も吐けなくなってくる、というのは?
川村 あまり人の弱音を聞きたくないと思っているので、自分でも言わないようにしてるんです。
清田 女子会など、恋バナをする機会も減っていくんですか?
川村 若い子がいたらします。そう、今、ヤバいと思っているのは、若い子と飲むのが楽しいことなんですよ。女の子だけじゃなく、男の子でも。私がお金を払って、キャバクラ的なノリで飲んでるんですけど、すごく気が楽なんです。一緒に飲んでいる相手に「もしかしたら、川村さん俺のこと好きなのかな?」と思われることがしんどいなって思っていて、お金を払うことでそれを回避できるというか。
清田 川村さん的には、実際に恋愛関係になることは望んでいないという感じなんですか。
川村 本当は愛されたいし好きにもなりたいけど、やっぱりフラれるのが怖いっていう気持ちが大きくなっているんですよ。「恋をしなきゃ」とは思っているんだけど、前の彼氏が一生で最後の恋だったかもしれないと思っている自分もいて。恋をするためには外に出ていくしかないと答えは出ているのに、出ていけない自分がいます。
清田 それは、ジレンマですね……。
川村 そうなんです。私は恋を諦めるという覚悟しなければいけないんじゃないかって気持ちと、でも、諦めたら終わりだから次に進みたいという気持ちが一緒にあるんです。そして、かわいい子は歩いているだけで恋愛が転がってくるけど、私のようなブスは、そうじゃないから出歩かなきゃいけない。だから、飲み会があると行くけど、その一方で、どうせ無理だという気持ちを持っているというね……。今年の夏、ハワイに行ったんですけど、なんて幸せな場所なんだろうと思い、恋がしたくなりました。誰かに愛されたいって思ったんですよ。
清田 ハワイのパワーすごい!
川村 『生き抜くための恋愛相談』には“現在地”という言葉が出てきますよね。それで私も、今現在の自分が置かれている状況みたいなものを考えてみたんです。「38歳になりました」とか「月のお休みは火曜日と水曜日が多いです」とか事実を書き出したりして。でも、自分をアップデートする仕方さえ、今はよくわからないなと思いました。意見がだんだん変えられなくなってくる年齢ですね。複雑化する38歳。だからこそ、もっと若いうちに恋をしておけばよかったなって思ったんです。できるうちに、もっと経験をして、ルールを見つけておけばよかったなと。
過去の恋愛アルバムを捨てる必要はある?

(撮影/尾藤能暢)
清田 先ほどから何度も「ブスは~しなければいけない」という話が出ていますが、それについてもう少し詳しくお聞きしてもいいですか?
川村 「ブスは出歩け、ブスは待て、ブスは喋るな」ですね。この場合の“ブス”はすなわち自分のことです。他人に対して言ってるわけじゃない。
“出歩け”は、先ほども少し話したように、向こうから声がかかるかわいい子とは違うので、飲み会などには参加しようということです。
“待て”は、私の経験上、自分からグイグイ行ってもうまくいった試しがないから。重いといわれる催促をしたりもしてはいけないんです。
“喋るな”は、人に恋愛話をするとうまくいかなくなることが多かったので、恋をしても誰にも言わないし秘密裏に進めるようにしているんです。全部、川村流ですね。
清田 それをキャッチーな表現にするため、“ブス”という強い言葉を使っている。
川村 わかりやすいというのがひとつと、あと自分を戒めるためでもあります。「お前は一番、底辺にいる人間なんだぞ」と言い聞かせるというか。
清田 そんなに戒めなくても……。
川村 それで、この前の恋が最後だったかもしれないと思う自分がいるから、前の彼との思い出が詰まっているアルバムを捨てられないんです。相手のことを忘れられないから捨てられないというわけではなく、これが最後の恋だったら、おばあちゃんになったときにすがる思い出が何もないんじゃないかと思って。それが怖くて捨てられない。
清田 それは無理に捨てなくてもいいんじゃないですか? アルバムを見ることでつらくなるなら捨てたほうがいいかもしれないけど、あの時代にこういう時間を過ごしたなということを思い出すためのツールにしたいということなら、捨てる必要はないと思いますが……。
川村 え、いいんですか? みんな捨てたほうがいいって言うんですよ? 友だちも、タクシーの運転手さんも。
森田 すでにしっかりと心の整理ができているなら、持ってたって全然いいじゃないですか。お友だちやタクシー運転手さんの“恋愛の方程式”に合わせる必要はないと思います。みんなきっと、川村さんみたいにサッパリと物事を考えられないのかもしれない。
川村 初めてです、捨てなくていいと言われたの。
森田 恋愛で生じる気持ちの動きって人それぞれで多様だから、「こうしなきゃだめ!」なんてことは、どんなことであれ、誰にも言えないと思います。
清田 むしろ進歩的な恋愛観にすら感じます。
川村 そうかな~、全然、わからないけど(笑)。
清田 少し話は戻りますが、一人でいることが怖いということですが、川村さんにとって恋人がいることと、生活上のパートナーがいるということは、違うものですか? というのは、我々が相談を受ける中で、「生きていく上でパートナーがほしい」という意見を、よく耳にするんです。「結婚したい」という気持ちを因数分解して考えてみると、自分は仕事をしたいし、趣味もある。友だちもいる。でも、一緒に伴走していけるパートナーが欲しいという人が結構多いなと感じていて。
川村 なるほど。それで言うと、伴走とはちょっと違うかもしれません。単純に、何でもない話ができる相手がほしいんです。例えば歯医者さんに黒夢の清春さんが来ていたことがあって、あんなにロックなのに歯医者に来る、ちゃんとした人なんだと思ったんですけど、そういうどうでもいい話をしたい。誰に言うことでもないなという話を、今は日記に書いているけど、伝えられる人。やっぱり一人って淋しいんですよ。同じように伴走したいということではなく、それぞれ自立はしていて、でも、ふとしたときに話せる人がほしい。
森田 それはすごく素敵な考え方だし、本質的なことだと思います。川村さんは、そのような存在になる人が、この先、見つからないかもしれないことが恐怖なんですね。
清田 ちなみに、前の彼にはそういう“どうでもいい話”はできたんですか?
川村 言えなかったですね。電話をして、彼が「今日こんなことがあってね」と喋って、私が「そっか、大変だったね。私はね……」と話そうとすると、いきなり「じゃあね」って電話を切る人でしたから(笑)。でも、私が付き合う相手はそういう人が多いんです。自分の話を聞いてほしい男の人が意外と多いことは経験上わかっているのでいいんですけど、だから、私のどうでもいい話はできなかった。
清田 コミュニケーションが取れる人がいいですよね。我々もよく記事で書くんですが、男性にはどうも“プレゼンテーション”のことをコミュニケーションだと勘違いしている人が多いような気がしていて。というのも、「俺の好きなものや俺の魅力をお前に説明するぞ」とか、「俺の面白い話を聞け」というのは、一方向的なプレゼンテーションですよね。
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