連載

セクハラを“男性問題”として捉えるには「ロジックで考え、自分の内面を見つめる」こと

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先生、よろしくお願いします!

先生、よろしくお願いします!

男性性にまつわる研究をされている様々な先生に教えを乞いながら、我々男子の課題や問題点について自己省察を交えて考えていく当連載。4人目の先生としてお招きしたのは、長年セクハラ問題の解決に取り組み、加害者の実態に迫った『壊れる男たち─セクハラはなぜ繰り返されるのか─』(岩波新書)などの著書もある「職場のハラスメント研究所」所長の金子雅臣さんです。

▼前編
セクハラは男性の問題である。立場上の優位性ありきの関係を「プライベートの恋愛」と誤解する人たち

「関係ない話かもしれませんが、実は部長とトラブルがありまして……」

清田代表(以下、清田) 前編では、『壊れる男たち』に登場するエピソードや僕自身の体験談などを紹介しながら、セクハラの加害男性に関する問題点についてお聞きしてきました。後編では、金子先生が著書でも提示されていた「セクハラを“男性問題”として捉える」にはどうしたらいいかという部分についてうかがってみたいと思います。

金子雅臣(以下、金子) よろしくお願いします。

清田 金子先生は、まだ日本に「セクハラ」という言葉がない時代からこの問題に取り組まれています。想像するに、その時代から、しかも男性がセクハラ問題に関わるというのはかなり珍しいように感じますが、そもそものきっかけはなんだったのでしょうか。

金子 私は1970年代の後半から、東京都の職員として労働相談の問題に関わっていました。当初は窓口に来るのはほとんどが男性で、「給料をちゃんと払ってもらえない」「会社を不当な理由で解雇された」「これでは生活を支えられない」といった相談が多かった。しかし、80年代の中頃あたりから働く女性たちからの相談が増えてきたんです。当時は男女雇用機会均等法が施行されて少し経った頃で、それによって働く女性の権利を保障し、差別のない環境を整備していこうという機運が高まっていたのですが、そういう中でつまずいた女性たちが労働の問題を抱えて窓口へ相談にやって来るようになった。

清田 それがセクハラ問題だった?

金子 いや、内容としては不当解雇の相談が多かったんです。いわく、上司から「反抗的だ」「意欲がない」「生意気だ」「使いにくい」などと言われてクビになったと。しかし、本人たちは「男性たちよりもちゃんと仕事をしている」という自負があり、納得していない。私は「あっせん」といって、紛争当事者の間に入り、双方の言い分を聞きながら合意点を見出していく仕事を担当していまして、会社側へなぜ彼女を解雇したのか事情を聞きに行くと、「出勤もままならない」「上司からの評価が低い」「まわりからも嫌われている」といった説明が出てきた。

清田 女性側と会社側の言い分が食い違っていますね。

金子 わかりやすく正反対のことを言っているなら、「どちらかが嘘をついてるかも」と見当もつけられるのですが、双方の言い分において、一致している部分と食い違っている部分がモザイク状になっていて、非常に判断しづらかった。そういう中で、女性たちから「これは関係ない話かもしれませんが、このあいだ部長とトラブルがありまして……」なんて話が出てくるわけです。例えば「社員旅行のとき、酔っぱらっていきなり部屋に入ってきた部長を引っぱたいて追い出したら、それから会社で気まずくなってしまった」とか、そういう類の話がいろんな女性たちから出てきた。

清田 うわっ、それが解雇の原因になってそう……。

金子 今の感覚ならそう考えるのが普通なんだけど、当時はセクハラという概念がなかったので、我々もそれを“プライベートな男女問題”だと捉えてしまい、労働問題と結びつけて考える発想がなかった。それであまり関係ない問題として脇に置いてしまっていたんです。会社側だってそんなこと絶対に申告しませんよね。でも、中には強姦未遂みたいなとんでもない事件も起きていて、それでトラブルになって辞める女性が多々いたわけです。

清田 めちゃくちゃ理不尽な話ですが……当時はそういうことがざらにあったわけですね。 

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清田代表/桃山商事

恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。失恋ホスト、恋のお悩み相談、恋愛コラムの執筆などを通じ、恋愛とジェンダーの問題について考えている。著書に『生き抜くための恋愛相談』(イースト・プレス)や『大学1年生の歩き方』(左右社/トミヤマユキコさんとの共著)がある。

twitter:@momoyama_radio

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