はあちゅう童貞いじりを考える。「童貞」への愛もdisりも揶揄も、男性に一面的な「男らしさ」を押し付けていない?

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セクハラ被害が被害であることに変わりはない

 ここまで長々と考えられる限りの問題点を洗い出してみた。

 セクハラなどのハラスメントは、当事者間の権力勾配に偏りがあるほど起こりやすいものだ。社会において男性は女性に比べて権力を持ちやすい構造があり、そのため男性から女性に対するセクハラやパワハラが発生しやすい。「男らしさ」を内面化し、無自覚に女性をモノ扱いする男性もいる。はあちゅう氏の証言を無効化する流れの中には、「モノ言う女は生意気だ」という考えも少なからず影響していたのではないだろうか。

 だが、ハラスメントは必ずしも男性から女性に対してだけではない。同性間はもちろん、女性から男性に行われることもある。「童貞いじり」は男性が男性に行うことも、時に、はあちゅう氏のように、女性が男性に対して行うこともある。

 中盤以降、「童貞いじり」にばかり言及してきたので念のため断っておくが、はあちゅう氏のセクハラ被害とその証言は、はあちゅう氏の過去の言動がどんなものであれ、被害は被害であり、その問題の大小を左右するものではない。

 今月新刊を発売しているはあちゅう氏に対して、「書籍の宣伝のために証言したのではないか」と邪推する声もあった。だが、はあちゅう氏の取材は以前より行われており、また、「はあちゅうと #metoo への批判 ハラスメント社会を変えるために共感を広げるには」には「BuzzFeedへの連絡なしで、岸氏がBuzzFeedからの質問状と返答をネットにアップした。質問状が公開されているのに記事が出ないのは不自然だ。我々は急遽、その返信を含んだ形で記事を公開することにした」とある。「書籍宣伝のため」と事実無根の邪推もまた、被害や告発の無効化にほかならない。

 その上、はあちゅう氏の新刊には、アマゾンレビューで書籍の内容と関係のない批判や、批判するために書いたとしか思えないレビューが殺到している。たとえはあちゅう氏の「童貞いじり」に対する態度に不満を抱いたとしても、これら誹謗中傷を擁護することは一切できない。

こうした動きをみればみるほど、セクハラや性暴力の被害を告発することのハードルの高さを実感し、はあちゅう氏の行動は勇気あるものだったと改めて思う。だからこそ、語りにくい様々な「性」の問題を、私たちが内面化し、無自覚に縛られている性規範の問題を、性別に関係なく真剣に考えていかなければならない。
wezzy編集部)

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