エンタメ

海猫沢めろんインタビュー ホストが語る「愛」は、子育てには通用しない――ホストのイクメン小説『キッズファイヤー・ドットコム』

【この記事のキーワード】

子育ては「100%リソースが割かれる」「メンタルがやられる」

umineko_03

――子育てについておうかがいしたいと思います。私は未婚で子育ても未経験なので、テレビで見る待機児童問題とかも「大変だな」とは思うんですが、まだどこか他人事なんですよね。かなり漠然とした質問なのですが、子育てってなにが大変なんですか?

海猫沢 全部です(笑)。病んでいて、働かなくて、毎日うざい小言をぐちぐち言ってくるホストがつねに背中に乗っているみたいな感じですね。なにが大変って、やっぱり自分のパフォーマンスが落ちることなんですよ。子供がいるってことは、要するに世話を見続けなくちゃいけない相手がいること。ずっと見ていないといけないし、コミュニケーションも取れない。だから、100%リソースが割かれるんですよ。そうなるとなんにもできないんですよ。だから、「ただ人間ひとり増える」だけじゃなく、こっちの注意力とかが全部持ってかれるんですよ。仕事ももちろん、なんにもできない。

――子育てだけに時間を割くことになるんですね。

海猫沢 アメリカの学校では、「子供がいる生活は大変なんだぞ」ということを教えるために、小麦粉が入った袋を持たされるらしいんですよ。乱暴に扱ったら、破れるじゃないですか。それを破かないように、大事に扱うことを学ぶらしいです。でも“実践”ではその小麦粉袋が動くんですよ。ほったらかしにしたら普通に死にますからね。だから、まず子育てする環境を整えなくちゃいけない。子供が口に含んでしまいそうなものは片付けて、眠っている間になにかしたら危ないから檻を作ったり。

なによりメンタルがやられますね。本当に寝れない、仕事できないって状況が続くと、人生が止まっているような気がするんですよ。いつか終わりが来るんですけど、永遠に続くんじゃないかって気がするんですよね。人間は寝ないとやっぱりストレスが溜まります。どんなに温厚な人でも、寝られない状態が続くと、絶対にキレますよ。

――神威も夜泣きする赤ちゃんにあたふたしていましたもんね。彼は早々に子育てはキツイと音を上げて、クラウドファンディングで子育てをすることを思いつくんですが、“子育てをするために資金集めをする”というアイディアはどこから得たんですか?

海猫沢 今の社会問題をどう解決するか……みたいなことをよく想像するんです。例えば今回だと、高齢者と若年層の格差問題とか。子育てが大変な問題とか。あとは、自分の実感が伴っていないことは書けません。クラウドを取り入れたのは、こういう仕組みがあるならいくらもやってみればいいのにって思ったのと、小説に新しいものを入れたかった。純文学では普遍的なものを追求する人が多く、時代性があるものを書く人が少ないんですけど。でも僕は書きたかった。

――でもクラウドファンディングで子育てって、日本で実際にやった場合、どうなるのかなって……。

海猫沢 最近ネットで炎上した件がありましたね、学生さんが子育て資金を募ってクラウドを立ち上げようとした(https://ishik0.com/cloudfunding-try)。これ、過去にもあったんですよ。Twitterで借金を抱えている妊婦が、出産前にお金がないと実業家の家入一真さんに助けを求めた。そしたら家入さんが銀行口座を晒して寄付を募れば、と提案したんです。そのツイートを家入さんが拡散して、実際妊婦の口座にめっちゃお金が振り込まれるってことがあったんですが、その妊婦のアカウントは今止まっています。

――この妊婦の件も当時、物議を醸しましたよね。子育てするためにクラウドファンディングをするってことを本当にやったとしたら、本書と同じようにお金が集まるのでしょうか。

海猫沢 過去の妊婦の件では実際に、かなりまとまった額が集まりました。学生さんの件は「働けよ!」というツッコミが入って集まらなかった……というかクラウドの審査が通りませんでした。この差というのは、クラウドをやってる人間が本当に大変そうか、大義名分があるかという部分ですが、結局それってみんなの気分なんですよ。小説と同じように、子どもの身寄りがないとか、本当に大変そうだと世間が判断したなら集まると思いますし、子供の人生をリターンとして欲しがる人もいると思います。ただし、露骨にやらずに「子供ユーチューバー」みたいな感じにしたほうがいいでしょう。あれも間接的にはそういうことですからね。どのくらいうまく世間をコントロールできるかにかかっている。

――子供の人生をリターンとして戻すということに批判が集まるにしても、お金は集まると。海猫沢先生はこのようなクラウドファンディングがあったら、出資しますか?

海猫沢 老後ならありえますね。あと、子育てクラウドはリスクもあると思っていて……その子供が“可愛い女の子”だったら絶対にお金が集まります。だって、アイドルを支援しているのと一緒ですからね。その子がもしかしたら、本物のアイドルになる可能性があるんですよ。それを幼少期からずっと見ることができるなんて、「YESロリータ・NOタッチ」をモットーとするロリコンたちにとっては最高なんです。親にとっては高リスクですが……。

1 2 3 4

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。