“離婚”を発表した同性カップルに過剰な責任を感じさせる社会こそ、自責の念をもたなければならない

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東小雪オフィシャルブログより

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 1226日に、元タカラジェンヌでアクティビストの東小雪氏と、会社経営者の増原裕子氏が「約6年半の関係にピリオドをうち、離婚するという選択を」したことを、公式サイトを通じて発表した。

 東氏と増原氏のふたりは、2013年に東京ディズニーシーで初の同性結婚式をあげたことで有名だ。『ふたりのママから、きみたちへ』『レズビアン的結婚生活』などLGBTなど性的マイノリティに関係する活動を積極的に行い、2015年には渋谷区で始まった同性パートナーシップ証明書の交付第一号ともなっている。今回の離婚に伴い、ふたりは渋谷区に同性パートナーシップ証明書を返還している。

 公式サイトに掲載された文章にはこのような記述がある。

「ふたりだけでは成し遂げられなかった素晴らしい経験ができたことを、周囲の大切な方々の顔を一人ひとり思い浮かべながら、ただただ感謝しております。それにもかかわらずこのような結果となってしまい、皆さまのご期待を裏切る形になってしまったこと、応援してくださっていた皆さまに対して大変申し訳なく、自責の念でいっぱいです。本当にお詫びの言葉もございません」

「現在日本のLGBTをとりまく環境が、日に日に改善している中で、私たち個人が出したこの結論が、その流れに水を差すことになってしまわないか、その懸念についても、慎重に話し合ってきました。非常に重い責任を感じております。その上で、ふたりでじっくり話し合い、今回の決断をいたしました」

 男女の離婚であれば、関係を解消する際に「このような結果になってしまい、応援してくださった皆さまに申し訳ない」と書かれることはあっても、「水を指すことにならないか」「非常に重い責任」といった言葉が書かれることはないはずだ。

 今年5月には、タレントの一ノ瀬文香氏とダンサーの杉森茜氏も自身のブログで発表している。杉森氏も東・増原氏と同様に、お知らせの文章の中で「まだLGBTへの差別が残る社会で、同性婚が法的にも認められていない中、これまで応援してくださった方たちには、感謝と申し訳ない気持ちでいっぱいです」と自身のブログに記していた。

 著名な同性カップルの関係解消は、日本のLGBTを取り巻く環境に水を差すようなものではないし、そうであってはならない。本来個人的な関係でしかないはずの恋愛・婚姻・パートナー関係に社会的な責任を担わせてしまうという、LGBTを取り巻く環境の問題を浮き彫りにするものなのではないだろうか。

 一ノ瀬・杉森氏の関係解消が発表された際にも見られたものだが、今回の報道を受けネットには「同性カップルは長続きしない」「(同性だと)子どもができないから」といった書き込みがある。だが長続きしない異性カップルは無数に存在するし婚姻関係を長年続けている子どものいない夫婦も数多い。そして当然、長年、パートナーとして関係を築いている同性カップルも数多くいる。

 東氏、増原氏の発表にはこのようにも書かれていた。

「時間の経過とともに、ふたりで様々な経験をし、試練を乗り越える中で、パートナーシップにも緩やかな変化がありました。それぞれの活動や仕事が増えていく中で、時間のすれ違いが生じてきて、また価値観の違いから、ふうふとして見たい将来にも少しずつすれ違いが生じるようになりました。その中でふたりの関係性に変化が生じ、現在、私たちはふうふとしてパートナーシップを継続することは難しいけれど、お互いを人生の中で得た大切な存在として、親友として、大切に思い、尊重しあえる関係でおります」

 時間の経過や環境の変化とともに、関係性が変わっていくことは異性愛者の特権ではない。人間が人間と関わるなかで、当然起こりうるものであり、それを特別視することは同性愛への偏見・差別意識の現れでしかない。

 先日、2014年に約20年同居していた同性パートナーが殺害された男性が、事件に巻き込まれた被害者の遺族や負傷者を支援するための犯罪被害給付制度の利用を申請したところ、愛知県公安委員会が不支給の決定をした、という報道が流された。いますべきことは、同性カップルの関係解消に社会的責任を押し付けるのではなく、偏見や差別、制度の不備がいまだに残る、当事者が過剰な責任を感じてしまうような社会を変えていくことだ。
wezzy編集部)

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