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『赤髪の白雪姫』は“自立型お姫様”の物語である。王子様の助けを待たずに自分で道を切り開くヒロインたち

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自立型お姫様とは?

 恋愛要素の強い作品のヒロインたちは芯を持ち主体的に行動していることから、いわば自立型お姫様といえるのではないでしょうか。

自立型お姫様とは、ブロガーのはあちゅうさんの記事を読んで印象に残っていた言葉です。子どもにもわかるフェミニズムの本である『アリーテ姫の冒険』(学陽書房)についての記事でした。

 はあちゅうさんは、強くて賢いからこそ王子様から選ばれないアリーテ姫が、王子がいなくても自分で道を切り開いて生きていくというストーリーに共感し、同じく自立型お姫様としての自身や同じような女性の悩みを綴っていました。最後に「強い王子様に見つけられたい」と書かれていますが、この願望を満たしてくれるのが白泉社の恋愛漫画なのではないでしょうか。

 現代の女性たちは常日ごろ戦っています。そして自分は何もしないでも王子様が助けてくれるというファンタジーは現実的ではないですし、ただ助けられることを望んでいる女性は減っていると感じます。

 自分でもできるかぎりがんばりたいし、能力を発揮したい。ただ必死にがんばって、そのなかでどうしようもなくなったときに王子様が助けてくれたらいいのに……まぁ別に王子様でなくてもいいのですが、そういう願望を持つ人は少なくないでしょう。

「いい子でいれば選ばれる」という呪い

 南マキ著『SA』、椎名橙著『それでも世界は美しい』、津田雅美著『彼氏彼女の事情』(すべて白泉社)などの作品は、ほかの作品と同様の主体的な女性主人公で、さらに相手役も一見、完璧超人に見えるようなクラシカルな王子様の要素が強いです。王子様に助けられても納得できる魅力的な女性を主人公に据えることで、クラシカルな王子様を現代に呼び起こすことができ、リアルなファンタジーとして人気を集めているのではないでしょうか。

 ただ、捉え方によっては「読者である女性たちが自分のやりたいことをがんばっていたら王子様が選んでくれるかもしれないという幻想を抱くのではないか?」という懸念があります。

 ここで挙げた作品のヒロインたちは、恋愛に対して主体的とはかぎりません。もともと恋愛を頭においてはいないことが多いからです。たとえ日常的に主体的な選択ができる女性だとしても、王子様と出会い好意を持たれる展開は偶然であり、ファンタジーの側面があります。ここで一歩間違えば「自分のやりたいことをがんばっていればきっと王子様に見初められる」「いい子でいれば選ばれる」という呪いになってしまいます。

 しかし、白泉社のヒロインたちの姿勢で本当に見習うべきは、ただ「がんばっていること」ではなく、自分に正直であり、まっすぐに人と向き合う姿勢です。

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卜沢彩子

1987年生まれ。子どもの頃からの度重なる性被害経験を、2009年から実名・顔出しでサバイバーとして発信。個人やNPOで支援・啓蒙活動をつづけている。2016年に複雑化した社会問題を解決するためにA-live connectを開業。恋愛・性をはじめとした人間関係やコミュニケーションに関する相談や講演活動、記事執筆、SEX and the LIVE!!プロジェクトの運営など場作りを行っている。英才教育を受けたオタク。和柄とねこが好き。

twitter:@ayakourasawa

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