専業主婦志望の女性が、渋谷にオフィスを構える社長になった/上京女子・ケース10

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Photo by 赵 醒 from Flickr

 かつて、私が会社員をしていた頃、部署移動した先に鈴木碩子さんという同僚の女子がいた。頑張り屋さんで責任感の強い彼女は、テキパキと仕事をこなし、毎日をとにかく忙しそうに過ごす。常に笑顔を絶やさない鈴木さんだったが、私にはどこか「頑張りすぎ」にも見えた。

 そんな彼女と仕事をしたのはたった1カ月。可愛らしいルックスで、一生懸命だけど、どこか不器用な女の子、という印象だった彼女の本質を、当時の私はまったく知らなかった。

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今日の上京女子・鈴木碩子(26)

今日の上京女子/ 鈴木碩子 26才 かつての夢は「お嫁さん」

 自然豊かなドイツでのびのびと過ごしていたが、3年生になる頃には、大学受験のために日本に帰国。鈴木さんが住むことになったのは、これまで一度も訪れたことのない横浜だった。彼女自身が選んだわけではなく、ドイツで通っていた日本人学校の提携校が横浜にあったから。両親はドイツで仕事があったため、高校3年生で慣れない一人暮らしをしながら大学受験を必死で乗り切り、日本大学の商学部に入学した。

 当時の彼女の夢は、お嫁さん。大学は一応行くけれど、バリバリ働きたいとか稼ぎたいなんて考えたことはなかったという。

 大学で商学部を選んだのは、「将来夫となる人に、教養のある女性だと思われたかったし、いざとなったら仕事を手伝ったり支えたりしたいと思った」というのが大きな理由だった。自分が表舞台で活躍するよりも「誰かをサポートしたい」という気持ちが強かったのは、大好きな祖母の影響だという。

「祖母は、働き者の夫を家で支えながら3人の子供を育てていて、まさに私の理想像」

 その後、実際に彼女が選ぶことになった道は、専業主婦とは真逆の働き方だった。

派遣・バイト・フリーランス・大手企業・ベンチャー。自分に合う働き方とは

「大学を卒業して、23年働いて結婚しようと思っていた」という彼女のプランが変更されたのは、震災がきっかけだった。

「津波で家が流されている映像を見て、このまま普通に大学を卒業して、就職していたら、大事な人に何かあった時に助けられるような、強い自分になれない気がしたんです」

 このままじゃだめだ。でも、何をしていいのかわからない。気ばかり焦っていた20才の誕生日に、大学に退学届を提出した。ドイツに住む両親は反対したけれど、意味も情熱もなく大学生活を続けるなんて、もうできなくなっていたそう。しかし、焦って大学を辞めたはいいけれど、その先のプランはまったく決まっていなかった。

 退学後はアミューズメントパークでの接客のアルバイトや情報誌の編集、メイクの師匠に弟子入りし、アシスタントをしつつフリーで仕事をしたりと、さまざまな仕事を経験した。同年代の人と仕事をしたくてスタートアップ企業に飛び込んでみた時には、働きぶりを評価されたり、他に勤めた企業では正社員登用、昇進などとんとん拍子にキャリアアップしていくこともできた。けれど、周りからの評価とは裏腹に、自分の心と身体はその環境に適さなかった。

「本当にやりたい仕事がしたい」。さまざまな経験を元に再度立ち止まった彼女は、芸能関係のヘアメイクやメディア運用や執筆の技術を活かして2度目のフリーランスになることを決意した。

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