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ドラマ『きみが心に棲みついた』が描く関係は「恋愛」か? ダメ人間たちの全方位傷つけ合戦がエグい

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『きみが心に棲みついた』公式サイトより

 1月23日に第二話が放送されたドラマ『きみが心に棲みついた』(TBS系)。平均視聴率は初回9.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)、第二話8.5%で可もなく不可もなくだが、昨年4月クールの同枠『あなたのことはそれほど』のように後半で右肩上がりに伸ばしてくる可能性もある。作品内容の陰惨ぶりでいえば、『あなそれ』に引けを取らない。

 “旬”と形容するに相応しい若手女優・吉岡里帆(25)が初の単独主演を務め、向井理(35)・桐谷健太(37)との三角関係が描かれるとなれば、ムズキュンラブコメが予想される。宣伝ポスターは、赤ずきんちゃんのような吉岡が少し困った表情で、男性二人に挟まれている構図だった。これは、向井と桐谷が恋のライバルとなり、吉岡を奪い合うラブストーリーが展開されるのだろう……と思いきや、全く違っていた。

 吉岡が演じるのは恋にオクテなヒロイン……というよりも、いろんな意味で未熟な女性。向井は王子様ではなく、イジワルなドS男子でもなく、陰湿で狡猾で支配的なサイコパス。桐谷は唯一、気が狂っていない。ただ、変なヒロインを着信拒否などせず、それなりに優しく接するあたりちょっとおかしいといえばおかしい。

 吉岡里帆演じる小川今日子は、下着メーカーに勤める会社員。幼少期から極度の緊張屋で挙動不審な態度をとりがちなため、周囲に引かれていた。母親に「かわいくない」と姉妹差別され、学校でいじめられ、自信などつくはずもない。大学時代、そんな自分を唯一「そのままでいい」と優しく言ってくれた先輩・星名さん(向井)にべったり依存するも、肉体関係はなくもちろん恋人同士でもないため、スマートでカッコいい星名さんは他の女性ともイチャつきまくりで今日子を傷つけた。卒業し就職してからは、星名さんのことを忘れようと努めてきた今日子だが、なんと星名さんが彼女の職場に“上司”として赴任してきた。今日子は平静でなどいられるはずもなく、再び星名さんに支配されていく。

 この二人、同じ職場で公私混同甚だしいのがまずひどいが、それはさておき。星名さんは仕事がデキる男で相変わらずモテモテなので、ちょっと会話したり星名チームに加えられたりしただけで今日子は「なんであんな女がッ!」と周囲をイラつかせる。一方でそんな今日子を評価し応援してくれる先輩社員(瀬戸朝香)もいるが、今日子自身が職場で公私混同しまくりなので救いようがない。それどころか星名さんで頭がいっぱいになり、大事な約束をすっぽかしたり仕事に身が入らなくても、自己弁護に終始する。傍から見れば完全にヤバい人だ。『あなそれ』の主人公・美津が身勝手な不倫に走るのも「ヤバい人」扱いされたものだが、それ以上~いや、数倍以上だと感じる。

 桐谷健太はどこで出てくるのかというと、今日子がストーカー的に片想いする漫画編集者・吉崎役だ。今日子は合コンで彼と出会い、ダメな自分をストレートに叱ってくれる吉崎に勢いで交際を申し込むも撃沈。その後も知人として距離を縮めたり離したりまた縮めたりしていくようだ。今日子が吉崎と付き合いたいのは、「好きだから」ではなくて「彼と付き合うことで自分が変われると思うから」。要するに自分を成長させるために貴方を利用させてください、ということで失礼な話なのだが、今日子にそんな自覚は薄い。

 今日子はなかなか特異なキャラクターだ。自分に自信がなく、他者によって自分を救ってもらいたいと願う依存気質なのに、吉崎には積極的にメールを送ったり声をかけたりとグイグイ攻め込む。また、社内で企画にダメ出しされれば泣き、弱ったところで星名さんに抱きしめてもらうとすぐ心を許しかけてしまう。そんな今日子は「弱い人」に見えるが、同じように星名さんも「弱い人」だろう。周囲の人間たちを意のままにコントロールする術に長けていてサイコパス的だが、全面的に支配していたはずの今日子が逃げていこうとすると執着し自分から離れられないよう策を弄する。

 今日子は星名さんが他の女性に優しくしたり寝たりすることに傷つく。でも彼女が星名さんに愛されたい、優しくされ続けたいのかというとおそらくそれも違う。学生時代、何かイヤなことがあればすぐ「星名さ~ん」と泣きついて慰めてもらってきた今日子は、優しくされて・傷つけられて・また優しくされての繰り返しで、星名さんなしではいられなくなった。この「傷つけられて」というタームがなければ、星名さんにだけ拘泥はしなかったかもしれない。ちなみに星名さんは今日子に暴力的な態度もとるしそれ以外の人間にも狂気を見せるが、暴力で今日子や周囲を支配しているわけではなく、あくまで巧妙な飴と鞭によるものだ。

 ここで描かれているのは、甘い恋愛の三角関係ではない。ツラい恋愛の三角関係でもない。少なくとも恋愛ではない、恋愛以外の感情でかたちづくられる関係性だと思う。心に問題を抱えた人間たちが傷つけ合いながら変わっていくのか、それともただ傷を深めていくだけで救いはないのか……まだ原作漫画も連載中であり、ドラマをどう着地させるのかはわからない。ひとつ言えるのは、登場人物が見事に成長するのではなく、彼らのどこまでも醜悪でダメな側面を描いていくとしたら、エグいけれど見応えはあると思う。ダメ人間と正しい人間がいるわけじゃなく、人間は誰もがダメな側面を持つもので、ダメな側面を見せないようにしているだけだからだ。あえてダメな側面をクローズアップすれば嫌悪感をもよおす視聴者もいるだろうが、惹きつけられる視聴者もまた多いだろう。

(清水美早紀)

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