
杉田水脈ツイッターアカウントより
杉田水脈衆議院議員(自民党)が今月24日、「『待機児童』なんて一人もいない」「待機してるのは預けたい親でしょ」といった主張をtwitterに投稿し、批判が殺到している。
「新しい歴史教科書をつくる会」の理事も務めている杉田議員は、以前より慰安婦問題について「慰安婦は性奴隷ではない」「強制連行はなかった」などの主張を行う、保守的な思想をもった人物として知られている。杉田議員は「女性観」も非常に保守的なものであり、ブログや著書の中でも、繰り返し保守的な女性観に基づいた自説を展開してきた。
待機児童、待機児童っていうけど
世の中に「待機児童」なんて一人もいない。子どもはみんなお母さんといたいもの。保育所なんか待ってない。待機してるのは預けたい親でしょ。— 杉田 水脈 (@miosugita) 2018年1月24日
2016年2月、少子高齢化の対策と女性の社会進出を推進する一方で、一向に解決されない待機児童問題に対する国への憤りを記した「保育園落ちた日本死ね!!!」が「はてな匿名ダイアリー」に投稿された。この記事は瞬く間に拡散され、その後、国会で取り上げられる、同年の流行語大賞のトップテンにランクインするなど、2016年で最も話題になった出来事の一つだった。
ちなみに、この「保育園落ちた日本死ね!!!」について、杉田議員は「(共産主義勢力であるコミンテルンは)これまでも、夫婦別姓、ジェンダーフリー、LGBT支援-などの考えを広め、日本の一番コアな部分である「家族」を崩壊させようと仕掛けてきました。今回の保育所問題もその一環ではないでしょうか。【中略】世論操作により、日本を貶めたい勢力により、国民がおかしな方向に導かれようとしている今こそ良識ある政治家の活躍が期待されています」という陰謀論を、「産経ニュース」の連載に展開している(「保育園落ちた、日本死ね」論争は前提が間違っています 日本を貶めたい勢力の真の狙いとは…)。
「保育園落ちた日本死ね!!!」から約1年半後の2017年9月、厚生労働省は、同年4月1日時点で待機児童数は前年の同時期よりも2,528人多い26,081人いることを発表している。また「認可外施設に入る」「親が育児休業中」など、待機児童の定義に当てはまらない「隠れ待機児童」の数も69,224人おり、「#保育園落ちた日本死ね」からまもなく2年が経つ2018年においても、待機児童問題は解決されていないどころか、深刻化しているのが現状だ。
自身のキャリアのために出産後すぐに働きに出たい世帯もあれば、経済的に困窮しており働きに出なければ生活が成り立たない世帯もあるなど、「待機児童問題」に直面している世帯の事情は様々だ。
しかし杉田議員のツイートは、そうした事情を省みることなく、待機児童問題の原因を「親のわがまま」だと理解しているものだ。その後、杉田議員は以下のツイートを投稿した。
批判やその他色々あると思いますが、私が常々思っているのは、日本の施策には子供の視点が抜けているのではないかということ。全て親の視点ばかり。働きやすいとかそうでないとか。子供の気持ちとか成長とか度外視してる。本当にそれでいいの?
— 杉田 水脈 (@miosugita) 2018年1月24日
なんだか皆さん、とても難しく考えていらっしゃる。私が児童館で子育て支援してた時のお母さん達もそうでしたが。子供の成長に何がいいのか?一番わかるのはお母さんですよね?例えば夜は9時までに寝たほうがいいとか添加物の多い食事はやめた方がいいとか。本当はとても簡単な事
— 杉田 水脈 (@miosugita) 2018年1月24日
自説の正しさを補強するために杉田議員は子供を利用しているが、「子どもはみんなお母さんといたいもの」「子供の成長に何がいいのか? 一番わかるのはお母さんですよね?」といった主張は、育児の責任を過剰に母親に押し付けるのは、子供が3歳になるまで母親は育児に専念するべきだという「三歳児神話」に変わりがない。これは誤った理解をもとに、子供を盾にし、母親を追い詰める“神話”だ。
また「添加物の多い食事はやめた方がいい」もよくある誤解のひとつだ。管理栄養士の成田祟信さんは『管理栄養士パパの親子の食育BOOK』(メタモル出版)で、化学調味料や食品添加物への親の不安を否定せず寄り添いながら(成田さんは、それらを「無理に使う必要はない」とも断っている)、過去に危険性が謳われていたサッカリンに発がん性がないことがわかっていることなどを例に、「過去の研究によって毒性があるとされた添加物も、今では安全があることがわかっていたり」することや「化学調味料や食品添加物は、あくまで私たちが食品を安全に食べるため、美味しく簡単に調理するためのツールにすぎない」と述べている。
こうした誤解や不安は、母親に限らず誰もが持っているものだ。その不安につけこみ、また誤った情報を都合よく解釈して母親を追い詰めるやり方で、「この国のより良い未来」が切り拓けるだろうか。
(wezzy編集部)