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性暴力犯罪はどう防ぐ? 批判が噴出した大阪府条例と、性犯罪に対する偏見を防止する条例を検討中の福岡県議会

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Katie Tegtmeyer from Flickr

 福岡県議会が、多発する性犯罪を防ぎ、被害者を支援する新たな条例案を議員提案する方向で検討していることが、今月19日わかった。早ければ3月末の条例案提出を目指しているようだ。詳細はまだ不明だが、報道によると、被害者を孤立に追い込む誤解や偏見をなくすため、県民の教育、啓発に重点を置く内容となる見込みとのこと。

 性犯罪全般を対象にした条例は全国で初めてだが、大阪府には「大阪府子どもを性犯罪から守る条例」という子どもへの性犯罪を対象にした条例が存在する。当時大阪府知事であった橋下徹が提案し、施行されたものだ。

 2012年に施行されたこの条例は、13歳未満の子どもに対し、義務のない行為を要求するなどの「不安にさせる行為」や、身体や衣服を捕らえ、つきまとうなどの「威迫する行為」に対して罰則を設けている。また、18歳未満の子どもに対する性犯罪の刑期満了の日から5年が経過していない者に対して、氏名、住所、性別、生年月日、連絡先、届出に係る罪名、刑期の満了した日を知事に届け出なければならないとし、違反者には5万円以下の過料を処するとしている。

 福岡県議会でも、大阪府のような、より具体的な犯罪抑止策をどう盛り込むかについても協議しているとのことだ。

 しかし、この大阪府の条例の制定の際には、賛否様々な意見が出ていた。

 大阪弁護士会からは条例施行前の2012年3月6日に、条例に反対する声明が出された。声明は、まず、不安にさせる行為や威迫する行為への罰則について「社会通念上正当な理由がある場合とそれ以外の場合とを明確に外観上区別することは出来ない」とし、「具体的にどのような行為を行えば処罰されるのかが不明確であることは、罪刑法定主義との関係で許されない」と主張している。また、条例が、市民に対して警察への通報を求めていることについて「地域住民は、子どもと関わりを持つ大人に対しては、まず疑いをもつことが求められ、とりあえず通報することを奨励されかねない。このような条例は、地域のコミュニティの破壊につながり、逆に子どもの成長の機会をも奪いかねない 」という懸念も示していた。

 さらに、子どもに対する性犯罪の刑期満了者への個人情報の届出義務については、「罪名、出所年月日」という高度にプライバシー性の高い情報に罰則付きの届出義務を課すことは、過去の最高裁での判例(個人情報について自己の欲しない他者にみだりに開示されない期待が法的保護に値すると判示した平成15年9月12日判決(早稲田大学江沢民主席講演会名簿提出事件)など)から、許されないことは明白であると強い懸念を示している。

 条例施行後の2012年10月には、日本弁護士連合会も「既に刑を受け終えた者に対して、上記性犯罪前科情報等を届け出るという新たな義務を課すことは、出所者の更生にとって大きな障害となりうるものである。」として、子どもに対する性犯罪の刑期満了者への個人情報の届出義務について強く反対する声明を出している。

 一方、2015年7月25日「産経WEST」に掲載された記事によれば、甲南大法科大学院の園田寿教授(刑法)は「子供への性犯罪では被害者やその家族が苦しむのはもちろん、加害者自身も自分をコントロールできず、悩んでいることが少なくない」「確かに人権侵害の面はあるが、潜在的な被害を予防できるという、それ以上の利益がある」とした上で、「条例を元受刑者の『監視』ではなく『支援』として活用することが大切だ」と述べていた。

 当時の審議会でも、どの程度の声かけが罰則の対象となるのかの議論が行われていた様子が伺える。また、性犯罪の刑期満了者に対しての個人情報の届出義務については、なぜ性犯罪についてだけやる必要があるのか、人権上の問題はどうなのかという意見が出ていたようだ。ただし、個人情報の届け出は、加害者の管理や監視が目的ではなく、あくまで性犯罪の未然防止を目的に、刑期満了者に対する社会復帰支援を実施するものであるとしている(「(仮称)大阪府子どもを性犯罪から守る条例(案)の概要」に対するご意見等の概要と大阪府の考え方について)。

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