性暴力犯罪はどう防ぐ? 批判が噴出した大阪府条例と、性犯罪に対する偏見を防止する条例を検討中の福岡県議会

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誤った認識が被害者を傷つける

 前述の通り福岡県の条例案の詳細はまだ不明のため、大阪府の条例に対して寄せられた批判・懸念に該当する条文が記載されるかは定かではないが、特筆すべきは、「『露出の多い服装の人が被害に遭う』『本当に嫌なら必死に抵抗するはず』など被害者側にも非があるような言説が誤りだということを学校で教え、教職員にも研修を課すよう県に求める内容などを検討している」という点だろう。

 世間では、性暴力の被害者にも落ち度があったのではないかという、いわゆる「レイプ神話」と言われる誤った考え方がまだまだ根強いのが現状だ。

 例えば2017年6月21日放送の『あさイチ!』(NHK)で「無関係ですか?性暴力」と題した番組内で放送された内容を覚えている人は多いのではないだろうか。

 番組内では、「“性行為の同意があった”と思われても仕方がないと思うもの」と題したアンケートが紹介され、「2人きりで飲酒」という項目に「そう思う」と答えていた人が27%もいたのだ。また、番組最後に紹介された視聴者からのFAXもまさしく「レイプ神話」そのものだった。

「被害に遭ったときに激しく抵抗し大声を出せば避けられるのではないか」(60代男性)
「死ぬ気で抵抗すれば防げる。性交が成し遂げられたのは女が途中で諦め許すからである」(70代男性)
「女性にとっては酷なことだとは思うが、男が狼の一面を持っていることは本当のことで、それを肝に銘じて言動することが求められる」(70代男性)
「性暴力は本当に加害者が悪い場合と、やはり被害者でありながら落ち度がある場合がある。女性として常に危機感を持つことが大切だ」(20代女性)

 それに対して、出演者のジョン・カビラは「ありえないですね。同じ言葉を、例えばですよ、その70代の男性は、娘さんがいるかもしれない、もしくは奥さまがいるかもしれない。その被害にあったら、娘さん、奥さまに、同じ言葉で言えますか。『最後まで抵抗しなかった君が悪い』って言えますかっていうことですよね。それと、例えばですよ、プロレスラー並みの体格の男性に(男性が)レイプされる可能性もありえるわけですよね。その時に、あなたは命がけで戦えますか、最後まで。そんなことは無理ですよね。全くの偏見で、全く当たらないと思いますね」と反論。放送後、SNSなどでは視聴者のFAXへの怒りと、ジョン・カビラへの賞賛の声が数多くあがっていた。

 言うまでもないが、2人きりで飲酒をしたことは性行為の同意を意味しない。また、ジョン・カビラのいう通り、体格差のある相手に抵抗することはほぼ不可能だろう。抵抗することでさらなる危害を加えられてしまう恐れもある。さらに、『Black Box』(文芸春秋)で紹介されていたストックホルムのレイプ緊急センターの調査結果によれば、レイプの被害に遭っている最中、体を動かすことができなくなる、拒否できなくなる、解離状態に陥るなどの擬死状態になる場合もあるのだという。

 これらの誤った言説は、セカンドレイプとして被害者を何度も傷つける。また、被害者に「自分が悪かったのではないか」と思わせてしまい、警察などへの相談の足を遠のかせることへもつながってしまいかねない。

 「JKビジネス」を取り締まる「特定異性接客営業等の規制に関する条例」を昨年7月に施行している東京都だが、施行条例に先立って開設された条法サイト『STOP JKビジネス!』は、児童に向けて自衛を促す方向性のものであった(JKビジネス「絶対にやっちゃダメ。」と啓発すべき対象は児童ではなく「大人たち」だ)。こうした自衛を促す啓発行動は、レイプ神話と同様に、「自衛しなかったのが悪い」と被害者を責め立てる風潮を招きかねないものだろう。

 そういう意味で、「被害者側にも非があるような言説が誤りだということを学校で教え、教職員にも研修を課すよう県に求める内容」を検討しているという福岡県の条例案は、非常に画期的で期待できるものではないだろうか。大阪府の条例に対して各所から懸念や批判が出てきたように、議論を重ねるべき課題は多数ある。こうした条例をきっかけに、被害者を傷つける言説が一刻も早く一掃されることを切に願う。
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