前篇では 『人生にゆとりを生み出す 知の整理術』(大和書房)を上梓されたpha(ファ)さんにお話しをうかがい、彼が公私ともに充実した幸せな暮らしを送っているのは、継続して勉強する姿勢をもち、未来型の働き方を実践しているからだと考えました。後篇では未来型・働き方の実現法をさらに掘り下げてうかがいます。
前篇:私たちは今後、どう働いていくべきか。『人生にゆとりを生み出す 知の整理術』著者pha氏に見る“未来型の働き方”
前篇を読んでくださった方はこう思うのではないでしょうかーー「早朝から深夜まで仕事していて土日は疲れている。働きながら勉強する時間も体力も残ってない」と。
ゆとりを生み出すための勉強をするゆとりが、そもそも日本型の就業スタイルには存在しないのではないでしょうか。私より若い人からも、長時間の残業や休日出勤続きなのにお給料は少ない、残業代は出ない。そんな環境で体を壊してもお金がない、時間がないなどで病院にも行けない、という話をよく聞きます。
そういう働き方に関してはphaさんはこう語ります。
「そういう環境からは早めにリタイヤしたほうが幸せなのかもしれません。体力があるせいで職場についていけるほうが、逆にしんどいことになるのでは。働いてる人が、やばいと感じたらすぐ辞められるようになったらいいですよね」
お金がないと自己肯定できない
仕事はお金を得る手段であるだけではなく、社会への帰属意識も私たちに与えてくれます。私も失職し、ある日突然どこにも所属しない人になりましたが、それはお金がないことと同じくらい不安で自己肯定感が削られるできごとでした。
どこかに所属していなくても自己肯定感を保つためにはどうしたらいいのでしょう。
「仲間がいるといい」
phaさんさんはいいます。
「社会では、仕事してないというだけで下に見られることもありますよね。でも僕はそうじゃない人ばかりでコミュニティを作っているから、気にせず済んでいます」
自己肯定感もコミュニティによって支えられている、とphaさんは言います。
「周りが自分を否定する人ばかりだと疲れるけど、僕のコミュニティはみんな似たようなかんじだから楽です。『別にそれでいいんじゃない』って言ってくれる人がいると自信がもてます。そう言う場があることは大事です」
そもそもphaさんがニートになったのも、そういう仲間がいたからできたことだそうです。
「ネットの世界には会社を辞めて、枠にはまらない働き方をしている仲間が多かったんです。おかげで僕もなんとかやっていけるかな、と思えました。参考になる人がいるのは大事ですね。当時そんな人がいなかったら僕も会社を辞めてなかったかもしれません」
未来の日本に希望はある
phaさんはこうも言います。
「無職で生活がやばそうな知り合い何人かに、『生活保護申請してみなよ』ってすすめたこともありますよ。役所に申請の手続きについて行ったこともあります。いずれも、最初は生活保護という発想がなかった人たちです。けど、保護を受けている仲間がいれば『あっ、あんなかんじで生きていけるんだ』って思えるみたいです」
生活保護申請を勧められるのは、「働かざる者食うべからず」の価値観に染まっていないphaさんとそのコミュニティの支えがあってこそできることだと思います。自分と似たような価値観の人とコミュニティを築けているかどうかで、ひとりの人間が命をつなげるかどうかが決まることもあるのですね。
英国の経済思想家、リンダ・グラットンも著書『ワーク・シフト』(プレジデント社)でコミュニティの大切さについてw書いています。
グラットンが提唱する未来の働き方で起こる3つのシフトのうちの〈第2のシフト〉は、コミュニティを築くことです。これまでの時代、仕事にはどうしても孤独な競争という側面がありました。ですがグラットンが予測する未来のワークスタイルでは、仲間と協力して起こすイノベーションの要素が不可欠となっていくというのです。
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